コロナ禍で銀行口座が開設しやすくなっている⁉

コロナ禍では、感染防止のため、銀行窓口業務は縮小されており、新規口座の開設はネットを通じて行うように、銀行側から勧められることがあります。

ATM
写真=iStock.com/PKpix
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そうした事情に便乗しているのか、経済的に困窮した人が他人に譲り渡してお金を得る目的で口座開設をするケースが少なくありません。その際、譲り受ける側の道具屋は「不正口座として開設しやすい銀行」を指定します。SNS上に出ていた銀行名はおそらくこれに該当するに違いありません。

また道具屋は、譲り受けるだけでなく、不正な手段で入手したり偽造したりした身分証を使って口座を開設します。こうなると、いくらでも口座が作れてしまいます。

特に心配なのが、顔写真なしの身分証明証(健康保険証や介護保険証、年金手帳など)であっても、それに加えて公共料金の領収書などがあれば、開設できる銀行が一部にあることです。運転免許証などに比べて、写真なしの身分証や領収書などは容易に偽造しやすく、口座を開設しやすくなります。

今、ネット上で不正注文の被害も増えています。これは、例えば、通販サイトから不正注文者(犯罪者)が正規の形で注文をして、商品代金を後払いの形で送らせるものの、商品を受け取る場所は、誰も住んでいない空きアパートに勝手に入り込み、商品だけを受け取ってお金を払わない、といった手口。

それと同様に、組織的犯罪グループにかかわる道具屋もキャッシュカードなどの郵送物も身分証に記載された空きアパートなどに送らせて受け取っているとみられています。こうなると今のコロナ禍は、詐欺犯にとって銀行口座が作り放題の状況ともいえるのです。

以前、不正に口座を買い取る業者から話を聞いた時、驚くべき発言を耳にしました。

「たくさんの運転免許証を持っているよ。そのなかで顔の似た人物に窓口に行ってもらい、銀行口座を開設してもらっている。それで、口座を開設したら、携帯ショップにいって、契約してもらう」

銀行の有人窓口ですら、不正入手の身分証で口座開設ができてしまうのですから、ネット上での手続きとなると、言わずもがなです。この業者はさらに「もちろん、偽造免許で口座開設するグループもあるけど、うちら(買い取った身分証)のほうがバレるリスクは少ないよ」と悪びれることなく付け加えています。

コロナ禍になってから、ロマンス偽投資詐欺だけでなく、ATMに呼び出して電話で操作方法を指示して、不正口座へ振り込みさせる「還付金詐欺」も増えており、こうした不正な口座作り放題の状況と無関係ではないでしょう。

道具屋の役割は、銀行口座と携帯電話の調達。この2大ツールを準備し、だました相手をATMに呼び出して、不正口座に送金させるのが還付金詐欺です。今、この2つがいとも簡単に入手しやすい環境であることが詐欺被害増加の要因のひとつと考えています。