5年間で約21倍に急拡大した業界に規制が追いついていない

筆者は、行政の対応を、もどかしく感じている。

先ほども述べたとおり、消費者庁が検討会を開始した。そのことは喜ばしい。しかし、違法の疑いがある広告が大量に流通している状況は、数年単位で続いている。対応が遅すぎる、という印象は否めない。

行政も、何もしていなかったわけではない。厚生労働省は、2014年から2016年にかけて2338サイトを指導し削除させた、と発表している。消費者庁も、2016年から2017年にかけて580事業者に改善要請を出した、と発表している。しかし今の惨状を見れば、摘発が追いついていないことは明らかだ。

レコメンドウィジェット広告業界は、近年、急速に伸びてきた事業形態だ。前述のデジタルインファクトの調査によれば、2015年の市場規模は年間16億円だった。それが、2020年予測値では年間349億円にまで増えている。

5年間で約21倍。極めて急激な拡大だ。一方で、行政側が法執行のためにかける予算は、簡単には増やせないだろう。また、これも前述のとおりだが、薬機法と景品表示法では、広告事業者が処分されることはほとんどない。実運用のルールがそうなっているからだ。だから、行政の手が行き届かないことについては、行政に対して同情の余地がある。

ともかく、消費者庁の検討会は開始された。遅きに失した感はあるが、実効性のある対策を期待する。

薬機法違反のある広告を停止し健全化に踏み切った業者も

このように違法の疑いがある広告が膨大に表示されているなか、健全化に舵を切ったレコメンドウィジェット運営会社がある。popInだ。

popInのレコメンドウィジェットは、他社と同様、ひどいものだった。前掲の薬機法違反の疑いがある広告率の表で示したとおり、popInの比率は44.2%と極めて高かった。

しかし、popInは今年5月に大きく方針を変えた。「誇大広告・差別的広告の配信を停止」した、とプレスリリースを打った。

これまで、このようなアナウンスは実効性を持たないものがほとんどだった。しかし、筆者が見ている範囲内では、popInの薬機法違反の疑いがある広告の比率は、おそらく1%以下くらいまで減っている。

popInが過去にしてきたことは、糾弾されてしかるべきだ。しかし、いま行われている対策については一定の評価をすべきだろう。