「すいませんけど、ここに複数人で座るのはダメでして」
「お兄さんたちは違うだろうけど、路上飲みするんですよ。いるとどんどん集まってきちゃうから、遠慮してもらっています」
若い男性警備員いわく、この声掛けは「建物とか(新宿)区からの要請」とのことだ。
春先から、幾度も黄色いベストの警備員は見てきた。しかし、彼らがトー横キッズに声をかけているのを見たことはなかった。まして、一息ついている他の大人たちまで相手にしようとは、全くの想定外だった。歌舞伎町、なかでもトー横の風紀の乱れを指摘する声が一部で高まっているのだろう。
大人たちはキッズを排除しようと躍起だが…
古株のヤスアキ君が懸念したように、トー横キッズは排除され消えるのだろうか……。
どうやら、そんな単純な流れにはならなさそうだ。
夜もふけた午後10時20分ごろ、トー横を再訪してみた。すると、黒を基調とした服装にピンク髪と、一目でそれと分かるキッズたちが座り込んでいた。また筆者たちが撤収した2時間半後には、複数のグループがたむろしている様子をテレビが報じていた。
警備員を使って、大人たちはトー横から彼ら彼女を引きはがしたく、斥力を生もうとする。かたや、キッズたちにとってのトー横は、避難所でもあり、あこがれの場所だ。いまや強い引力を生んでいる。
この斥力と引力が勝負すれば、どちらが勝つか。夜が深まるにつれ、キッズが増えたことを考えると、結果は自明だ。
もうしばらくの間、筆者はトー横から目を離せそうもない。