家出し、行く当てがなく仲間で助け合う

普段飲む酒は、アルコール度数の強いストロング系で決まっている。すごく酔いたい奴は、焼酎を1本持ってくる。それと同じように、せき・たんの薬や睡眠薬とかを選んでいる。

酩酊できれば、一時的でも嫌な気持ちを紛らわすことができるから。

――未成年の飲酒、ODは看過できない上、トー横は路上だし目立ちすぎているのでは。

最近は、トー横がアイコンになっちゃって、どんどん中高生が来ているよね。みんな面白いもの見たさに集まるけど、その中心にいるべき面白い奴がいない。僕には物足りなくなっているかな。

確かに人数が増えすぎているし、目立ちすぎてもいる。でも、ここが唯一の居場所って子も多い。あと、僕らは僕らで助け合っている。

家出中の女の子が「ホテル代が払えない」と言う。そしたら誰かが出してやっているし、僕も1万円を渡したことがある。こういうお金の支払いに、自分の価値を見いだしているところはあるよね。

ケンやケンを飼っていたミキだって、トー横以外に行く当てがない。そうした場所であることは、分かってもらいたい。「悪いことやっているから、トー横キッズなんて排除していい」。こんなふうにはなってほしくないかな。

トー横は「避難所」であり「共助の場」でもある

ヤスアキ君の話を聞くと、トー横は単なるたまり場というより「避難所」としての役割も持っているようだ。家庭や学校に居場所のない若年層による「共助の場」としても機能しているのだろう。

一方、トー横キッズの実態に近づけば近づくほど、危なさを感じる。また、過度の飲酒やODで救急車を呼ぶような事態を起こしていれば、「街の風紀を乱している」と指摘されて当然だ。

ケン君の書類送検の影響だろうか。8月下旬の現場取材の際、かつてない出来事があった。午後6時すぎ、キッズ不在のため、トー横の植え込みに女性編集者と腰をかけ、今後の相談を始めた。すると、後方から「SECURITY」の黄色いベストを着た警備員に声を掛けられた。

午後6時35分ごろ、トー横の植え込みに腰かけている男性に警備員が声をかけていた
筆者撮影
午後6時35分ごろ、トー横の植え込みに腰かけている男性に警備員が声をかけていた