コロナ肺炎はウイルスそのものの障害だけでなく、必要以上にウイルスの侵入に反応して肺に炎症を起こすことで悪化します。もともと何らかの病気、慢性炎症や喫煙などの原因を持っていたりすると、それが種火になり悪化しやすくなります。肥満者や持病がある方、高齢者でその傾向が著明です。

そこで初期治療としてステロイドで過剰免疫を抑えて免疫調節作用を持つ抗生物質を用います。しばらく過剰な炎症を抑えられれば、ご本人の免疫が上がってきて治癒します。

悪化はCTで判断します。入院時の治療もその延長線上です。弱った呼吸を酸素投与や人工呼吸器、ECMOなどの機械で助けながら、ステロイド点滴と炎症を抑える特殊な薬剤の点滴を行い回復を待つのです。

最近、抗体カクテル療法(注6)という言葉を耳にされた方も多いでしょう。ウイルスに対する人工的に作った抗体のお薬です。併用すると体内のウイルスの増殖を抑えます。こちらも初期の段階で用いる必要があるため、外来で点滴して良いことになりました(注7)

メディアでは報じられていませんが、治療の方針は初期からICUまで連続しています。ですから地域医療の長尾先生から基幹総合病院の大木先生まで同じ現象が観察されてきたわけです。コロナ陽性の判断後、治療を開始すべき時期を保健所管理にして解熱剤だけで患者さんを自宅に放置し、診療ルールを厳重化しすぎて治療医療機関を減らし過ぎている「治療ネグレクト」が問題なのです。

陽性者抑制より治療に軸足を置くべき理由

次に現在のコロナの性質が観測されています。陽性者数と死亡者数が「リンク切れ」したことが、世界中で観察されています。

重ねてみましょう。

図表1と図表2を重ねたもの

死者数は5月中旬をピークに、減少傾向が続いていることが分かります。東京や大阪以外の地方都市、例えば神戸でも「全体の死者数も大幅に減少」と同様の現象が観察されています(注9)

陽性者数の大部分が無症状や軽症状で、被害とのリンク切れを起こしています。昨年とは局面が完全に変化し、防御よりも発生してくる重症者治療を日本の各地方で行うべきであることが明確です。