地域医療の最前線で患者と向き合った長尾医師

コロナ発生当初から発熱外来を立ち上げ、地域医療の最前線に立ち続けた兵庫県尼崎市の長尾クリニック院長・長尾和宏先生の取り組みにも注目すべきでしょう。プレジデントオンラインが、「『在宅放置でコロナ死する人をもう増やしたくない』長尾医師が“5類引き下げ”を訴える本当の理由(注3)という記事にまとめています。

「救急病院に行く人は、いきなり重症化しているんじゃないですよ。どこかで診断されて、1週間か10日放置されるから、ああいう状態で行くわけですよ。(中略)ステロイド注射もずっとやってるんですけど最初の段階でやらないから重症化して運ばれることになっているんです」

マスクをして咳をする女性
写真=iStock.com/west
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長尾先生は初期治療の重要性を説きつつ、「コロナ用の感染症法上の分類をつくって簡素化して皆んなで見れば終わる」と訴えています。私も、昨年からこうした現状に気づき、コロナ陽性患者さんが保健所管理になる前にステロイドとマクロライドを処方し電話対応してきました。適切な初期治療と観察で患者さんを守ることができます。

基幹総合病院の大木先生も地域医療の長尾先生も理想論でも精神論でもなんでもなく、自粛の社会破壊だけに偏り専念してきた専門家会議をかわしながら、患者治療のために実務的に戦ってきた「すでに起きたリアルなファクト」の観察報告です。

まとめると以下になります。

1.初期治療を診療所などで行えば軽症で治る人が圧倒的に多い。
2.流行初期に制定された2類継続がまん延期の治療を阻害しつづけている。分類を改定すれば初期治療できて、同時に医療逼迫ひっぱくもすぐに氷解する。
3.総合病院には、医療逼迫などしないインフラがすでに存在する。
4.政府のアドバイザーである専門家が治療方法を構築せず「治療ネグレクト」をひきおこし放置している。
5.コロナウイルスは常在化したので通常診療の一つの業務として片付け、他の疾患の治療の邪魔にならないようにする

どの病院にも、インフルなどで院内クラスターが起きないように感染病室があります。土着化したコロナを特別視しないでインフル並みの扱いにすれば、入院しやすくなり他の病気の治療にも影響を与えない状況に生まれ変わるわけです。すぐできることです。

初期治療が重要である理由

コロナは抗ウイルス薬がないのに治療できるの? と思われる方も多いでしょう。何も治療がないとメディアも専門家も喧伝し不安をあおってきました。それはウソです。最重症者である人工呼吸器やECMOの装着者も8割が生還します(注4)

コロナの抗ウイルス薬はまだ開発中ですが、人間には治癒能力があるので必須ではありません。より軽症の人を含め回復する人がほとんどであることが明確です(注5)。そもそも季節性コロナは弱毒なため、治療薬は開発されてきませんでした。