現在ビズリーチには、海外進出に必要な人材の求人が多数寄せられている。震災後、サイト登録希望者は2割強増えており、登録者の転職活動も活発化した。

「転職活動はいまの自分の市場価値を知る最適な機会。キャリアの“健康診断”的に登録する人もいます。登録者が増えたということは、将来に対する不安感が強く、広く通用するキャリアを身につけなければいけないと多くの人が思っている証拠でしょう」

日々の仕事・暮らし・お金
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プレジデントのアンケートでも、「勉強会に参加したり、学校に通い始めたりした」と答えた人が13.8%に上っている。すでに多くのビジネスマンが勉強や自己啓発にかなりの時間を割いているが、さらに実力を身につけなければ、生き残れないという焦りが勉強熱に拍車をかけているようだ。

「今回の震災で企業は薄情だと感じたり、自分の仕事のはかなさを思い知った人もいたのではないでしょうか」

働く場所に対する考え方が変化したと話すのは外資系ITコンサルティング会社に勤務する長友明さん(33歳)。

「地震後、東京以外の勤務地を考えるようになりました。それも海外というより、地方ですね。以前は東京でなければ仕事もないし、刺激がない地方には住みたくないと思っていたんです。でも今回の地震があって、一極集中で地震リスクも高い東京に居続ける必要はないんじゃないかという考えが強くなりました」

<strong>長友 明</strong>(33歳/外資系IT/転職歴なし/独身)●「当日古いビルにいて、かなり揺れたので怖かったです。直後には会社を辞めて安全な九州にでも移住したいと思っていたけれど、いまはその熱も冷めてきた。でも、どこにいても情報が取れる時代になって、東京の魅力が失われた気がする。身軽だし、2~3年のスパンで移住を考えてもいいかも」
長友 明(33歳/外資系IT/転職歴なし/独身)●「当日古いビルにいて、かなり揺れたので怖かったです。直後には会社を辞めて安全な九州にでも移住したいと思っていたけれど、いまはその熱も冷めてきた。でも、どこにいても情報が取れる時代になって、東京の魅力が失われた気がする。身軽だし、2~3年のスパンで移住を考えてもいいかも」

長友さんの会社では、震災直後、CEOからのメールが全社員に送られ、本社機能が関西へ一時的に移転したこと、しばらくは自宅待機し、不安があれば家族とともに関西へ移動できるようにホテルを確保したことなどが書かれていた。

「僕は客先に出向しているので東京に残りましたが、家族皆で関西へ移動した社員もいました。本国から帰国命令が出て日本を去る外国人社員たちを見て、会社ってはかないものだなと思ったものです。僕の場合、独身で家族がいるわけではないので、いま住んでいる場所に縛られることはありません。若いころと違って遊び方も変わってきて、都心のど真ん中にいるより、郊外で自然と触れ合うほうが心地よかったりする。出世願望とか上昇志向はあまりないので、自分が快適に暮らせる場所で働く可能性を考えてみようかと思っています」

IT関連の職場で、仕事はどこにいてもできる、と以前から思っていたという長友さん。震災を経て、地方勤務という選択肢がますます現実味を帯びてきた。

(文中の登場人物はすべて仮名)

※すべて雑誌掲載当時

(増田安寿=撮影)