権力者は誰なのか(Who’s actually in power?)
「オリンピックをフォークにのせ、嫌がる幼児に無理やり食べさせているのがIOCだ」と書いたのは、ワシントン・ポストのコラムニストのバリー・スバルガ氏だ。
東京が、もし五輪を中止しようとしても、IOCはそれを許さない。つまり一番権力を持っているのはIOCだと指摘する。さらに、無観客であってもテレビ放映権の収入が入り、結果的に一番得をするのもIOCだという厳しい主張を展開した。
手を挙げる都市は減っている
記事の中で、五輪招致に詳しいスミスカレッジの経済学者、アンドリュー・ジンバリストは、開催を希望する都市の需要と供給の構図は、過去20年の間に様変わりしたと語っている。
最近では、開催地候補に名乗りを上げるも、途中で降りる都市が続出。たとえば、来年の冬季五輪の開催地北京の対抗馬には当初、オスロ、ストックホルム、ポーランドのクラクフなど6都市が立候補していたが、国内の支持を得られず4都市が途中で断念している。また、オーストラリアのブリスベンが2032年夏季五輪の開催地に選ばれているが、そもそもほかに立候補した都市があったのかすら明らかにされていない。その2年前に行われる2030年冬季五輪の開催地はまだ決まっていない。
調べてみると、2004年のアテネ夏季大会の時に立候補表明したのは11都市。しかし、2016年のリオデジャネイロ大会では7都市に減り、2020年東京大会では6都市に。2024年パリ大会では、パリ、ハンブルグ、ローマ、ロサンゼルスの5都市が立候補していたが、相次いで撤退。残ったのはパリとロサンゼルスのみだった。結局IOCは、将来の開催地を確保する意味もあり、2024年大会をパリで、その次の2028年大会をロサンゼルスで開催するという異例の同時決定をした。
開催地には財政負担が重くのしかかり、国民の賛同を得にくい。よほど財政的に余裕がなければ開催できなくなってきているのではないか。
前述のジンバリスト氏は、五輪は「スポーツの祭典」ではなく、巨額公共事業投資のための「建設イベント(construction events)だ」と言う。100年前と違い、通信環境も整っている中、わざわざ世界中の都市をまわる必要はなく、いっそこれからは、一つの都市で開催すればよいのではと提言する。
日本が払う“コスト”(Japan will pay the price.)
最後まで開催にこだわった菅義偉首相。感染者数が増大する中、「この首相の賭けが、人気取りに寄与したとは思えない」という主張が、海外メディアには多かった。
選手村の「バブル」の中では厳しいコロナ対策が行われていたが、「それを取り囲んでいる巨大な首都の中では、全くそのようなことはなかった」「フェンスの外では、パンデミックが日常であるかのような生活を送っている」と伝えたのは、ロイター通信だ。
厳しい対策にもかかわらず、大会終了の8月8日までに、五輪関係者だけでも458人が感染。開催都市である東京全体では、感染者が爆発的に増加し、1日の感染者数が4000人を超えるまでになった。
ブルームバーグニュースは、開会式の2日後に発表された内閣支持率が、昨年9月の就任以来最低の34%だったと報じている。
海外からの要人はほとんど訪れず、「菅首相は、外交上の評価を上げる機会を失った」という。