異分野の知見を持ち寄ってプロジェクトを進めていく

たとえば、これまでの車はガソリン駆動が中心で、それらの製造に元請けから下請けに製造指導をしながら発注という図式が成立していました。それにより、ピラミッド型組織の特徴とする権限による上下関係が自然と生まれたのではないかと推察しています。

一方で近年徐々にプロジェクト型組織の特徴が見られるようになってきた理由として、車が電気駆動へと変わっていく過程で、電気やITといった異分野の相手と幅広く協力関係を築きながらプロジェクトを推進していく必要に迫られていることが大きいと見ています。

同様のことは携帯電話の世界で先に起こっていて、かつては電話機としての利用が主流でしたが、スマートフォンの登場で今やすっかりコンピューター端末として利用されるようになりました。それによって作り手はハード+ソフト+コンテンツといった、これまで交流機会の無かった異種の人材間で協力・連携しながら、一つの商品・サービスを作り上げる必然性が生まれたことで、プロジェクト型組織を導入する土壌が築かれました。

2.価値創造する場所すべてが、オフィスになる

仕事は会社のオフィスでするものだと思っている人が多いかもしれませんが、ワークプレイスという「人が価値創造するための広義の場」という概念に従えば、その対象はもっと広くなってきます。たとえば、自宅やカフェもそうですし、あるいはオンライン上のコミュニティさえも、価値さえ生むことができればオフィスとして認められるようになってきています。

「ワークプレイス」の6つの構成要素

ただ、これだけモバイル端末やWi-Fi環境などインフラがそろっているのに、制度面の不足や保守的な企業文化に阻まれ、一部の大企業を除いてなかなか普及してこなかったのもまた事実です。

それが皮肉にもコロナ禍の影響で必要に迫られることで、各社一斉にリモートワークの導入が始まりました。まだまだ十分ではありませんが、それでも有事が無ければ、ここまで短期間で多くの人・組織がリモートワークを体験することはなかったでしょう。

有事収束後はこの体験を活かして、会社か在宅かといった狭い視野ではなく、あくまで価値創造に最適な場所を自ら選ぶ、という本質に立ち返ってほしいと思います。