孫正義の「説得力」の作り方
事業家の孫正義さんが、初めてマイクロプロセッサーを見たときの話です。
アメリカにいたときに、何かの雑誌の広告で初めてマイクロプロセッサーの写真を見たのだそうです。孫さんは最初、「何これ? 街の写真?」と思ったそうです。
ところが、次のページの写真で、それが人の指の上に乗っているチップだとわかった。
その広告写真を見たとき、孫さんは感動で泣いてしまったのだそうです。
「人類はなんてことをしたんだ。人間の脳みその替わりを作ってしまった!」
で、その広告を、ずーっとファイルに入れて持っていたそうです。好きなアイドルの写真みたいなものですね。
でも、そこからの孫さんがすごかった。
その小さなチップにできる情報処理能力を考え、チップが人間の脳みそを超えるのは何年先なのかを計算したというのです。
難しいことはよくわかりませんが、人間の脳みそも神経細胞がくっついたり離れたりという二進法で動いています。そこから計算して、パソコンのチップが、脳の神経細胞の数を超える年数を数値化したというのです。
このエピソードを知ったとき、私は感動しました。
いくら感受性の高い人でも、指の上に乗っているチップの写真に驚いて感動するところどまりだと思うのです。それなのに孫さんは、ロマンを感じて感動したあと、それを数値化した。
ロマンをロマンで終わらせず、自らの手で数値化して、具体的で説得力のあるところまで落としこむ。
ここが、本当にできる人のすごいところです。
できる人は、数字に強い。
そして、物事を数値化して具体化します。
ですから、コミュニケーションで誤解が発生しないし、描く未来もより具体的になるのです。
思わず注目してしまう「マジックナンバー」の効果
会議中、ひとりの出席者がこう発言したらどう感じますか?
「この問題解決のためには、ポイントが3つあります」
「あっ、この人できるな」って思いませんか。
前項でも数字を使うことの大事さをお話ししましたが、できる人は、とくに「マジックナンバー」をうまく使います。
セミナーの最中に、講師に「皆さん、今日はいろいろお話をしていますが、これから言う3つだけは絶対に覚えて帰ってください」って言われたら、「おっ、なんだろう」って、そこだけは集中力マックスで聞きますよね。
できる人は、この「マジックナンバー」が持つ効果をよく知っているんです。
「マジックナンバー」とは、人間の頭に気持ちよく作用する数字のことです。
たとえば、人間は「3」という数字に対して、「安定していてちょうどいい」という感覚を持つといわれています。説得したいとき、理由が2つだと相手は少なく感じるし、4つだと多すぎる。理由は3つなのが、多くも少なくもなくて心地いいんですね。
ですから、私は、「浅川さん、3つ報告があります」なんて言われると、「あっ、この人、できるな」って思ってしまいます。
ちなみに私は、電話営業で「3分、時間をください」と言ってスタートして、最長で4時間もお話をさせていただいたことがあります(笑)。
諸説ありますが、心地よく響くマジックナンバーは、3、5、7、9、13、15、17、21など。意識して使ってみてください。