「2回」の接種ではもはや太刀打ちできないのだろうか――。ワクチンを3回以上接種する行為は“ブースター”と呼ばれ、今、その必要性について世界で盛んに議論されている。イギリスやイスラエルでは抗体レベル向上への期待から、3回目の接種に向けて準備を進めている段階だ。
一方、2回目の接種すら浸透していない日本で、いち早くブーストをかけてしまった高齢者がいる。7月に入ってからというもの、80代の男性がワクチンを4回接種する事態が2件発覚しているのだ。
北海道・弟子屈町では8日、同町に住む80代の男性が、ファイザー製の新型コロナワクチンを計4回接種したと公表。この男性は医療機関に出入りする業者で、4月と5月に医療従事者の枠で2回の先行接種を受けた。その後、破棄を求められていた町の接種券を使い、一般高齢者として2回、接種した。「たくさん打てば免疫が高まると思った」と話しているという。
男性は町の接種の際、予診票に「未接種」と記入していた。不正による倫理面での問題は当然ある。だが、4回接種したことによる、その後の健康状態も気になるところだ。
弟子屈町の担当者は男性の予後について、「今のところ本人に変化はなく、熱もない」と話す。6日の発覚以降、電話や自宅訪問などで健康状態の聞き取りをしてきたが、12日時点でこれといった副反応はないという。
新型コロナのワクチン4回接種は日本においては前例がなく、男性にとっても未知の領域のはずだ。なのになぜ、4回接種というブースターに踏み切ったのか。同町の担当者は聞き取りの様子についてこう話す。
「男性は病院に出入りしている業者で、『感染して院内にウイルスを持ち込んだら、何を言われるか分からない』といったことを話していました。『インド株などいろんな変異株が出ているから、2回より4回打った方が免疫ができて、より効果があるんじゃないか』とも。こちらとしては、4回接種は想定外でした」
80代の4回接種は、大阪・岬町でも発覚。こちらは故意ではなく、2回で接種完了とは知らなかったという。