文在寅は、学生のころから祖国統一が悲願だった。人口が5000万人の韓国と2500万人の北朝鮮が1つになれば、現在より経済も存在感も大きな国になると計算している。もちろん軍事費の重圧も軽くなるし、うまくいけば核保有国にもなれる。
だが、韓国の一般国民は祖国統一にあまり興味がない。「あんな貧しい国と一緒になったら、東ドイツを助けた西ドイツみたいに自分たちの負担が増えるだけだ」とむしろ嫌がっている。誰かが負担するなら、それは分断を招いた米国や日本だと考える人も多い。
金王朝亡き後の植民地化を考えている
韓国の財界人の一部は、内心ではもっとえげつないことを考えている。すぐに統一するのでなく、韓国がコントロールできる傀儡政権を置いて、北朝鮮の人たちを工場で安い労働力として働かせる。これを10年、20年続けて経済格差が縮まった暁に統一する。それまで“植民地化”して搾取しようという考えだ。自分たちがやらなければ中国がそうするに決まっている。だから北朝鮮は統一して自分たちのモノ、と自他ともにわかるようにしなければいけない、という程度の統一願望なのだ。文在寅が金正恩と話し合っているが、経済人の頭はすでに金王朝亡き後の植民地化を考えている、と言ってもいい。
そのように自分たちの政府や同胞を信じられない国民が、どうにか一致団結できそうなのが反日感情だと考えて、政権は反日を必要以上に煽るのだ。文在寅の後任は反日を一転させるのか、最大野党「国民の力」の新党首に就任した李俊錫(36歳)の今後の動きも含めて、22年3月の大統領選に注目したい。
(構成=伊田欣司)