資産1億円あるはずが、なぜか1100万円しか残されていなかった

亡くなった父も姉のことを応援していましたが、父は息子である男性にも同じように接してくれていたので、男性はそれほど不満を抱くことなく過ごしてきました。

私立の音楽大学に進学した姉にかかった学費などは、男性が卒業した国立大学とはけた違いですが、もし男性が学費の高い進路を選んだとしても、姉と同じように学費を負担してくれたのではないかと言います。

また、男性が自宅マンションを購入する際に両親から1000万円の援助があり、2人の子どもの学資保険の保険料も負担してくれていて、姉ほどではないにしろ自分も気遣ってもらえているという意識がありました。

そして、父の遺産を待ち望んでいたわけではないものの、生前の父との話から、自分が受け取れるのは法定相続分で2000万~3000万円はあると思っていたので、それで十分だと思っていました。

ところが、父が亡くなって実家の資産状況を知ることになった男性は驚くことになります。

父は祖父から受け継いだ食品関係の小さな会社を経営していて、10年ほど前に整理しました。体力的にはまだ続けられそうな様子でしたが、経営状況は少しずつ悪化していて、老後資金の確保のために思い切った決断をしたのです。男性が後を継がなかったことも影響しているかもしれません。

その時点で具体的な資産内容は聞いていませんが、父とのやり取りから、自宅を除いた資産が1億円近くはあるものと推測できていたのです。

ところが、父の死亡時には自宅と1100万円の預貯金しか残されていませんでした。

ピアノを弾く手元
写真=iStock.com/eriyalim
※写真はイメージです

母親の収入は年348万円、支出は姉への小遣いを含めて450万円超

ここで、家族構成と資産状況の確認をしておきましょう。

家族構成
母:80歳
父:半年前に死亡
長女・姉(本人):55歳
長男・弟(相談者):52歳、妻と子2人(大学生、高校生)、会社員
資産状況
実家:父名義の持ち家戸建て、預貯金1100万円
長男:自宅マンション(ローン返済中)、預貯金800万円
家計状況
収入
母:348万円(遺族年金と老齢年金)
長女:0円(ピアノ教室で収入があったとしても経費差引後の所得はゼロ)
支出
基本生活費:360万円(月額30万円)
長女小遣い:96万円(月額8万円)