「国民の健康と命を守る」と口癖のようにいうが…

中川俊男(70)が会長を務めている日本医師会は「医療崩壊」「病床逼迫」の元凶ではないのか。

菅義偉首相との会談終了後、記者団の質問に答える日本医師会の中川俊男会長(中央)
写真=時事通信フォト
菅義偉首相との会談終了後、記者団の質問に答える日本医師会の中川俊男会長(中央)=2021年4月30日、首相官邸

中川会長を含め、これまでの幹部たちは口癖のように、「国民の健康と命を守れ」「国民の側に立った医療政策」を唱えてきた。

だが、「その裏で、『医師の権益』『開業医の利益誘導』という国民の利益とは反するような本音が垣間見えるのもまた、事実」(辰濃哲郎『歪んだ権威 日本医師会 積怨と権力闘争の舞台裏』2010年9月初版・医薬経済社)なのだ。

コロナ感染が蔓延する中、コロナ患者のための病床は、感染症への対応可能な病床のうちの、わずか4%しかないという。

なぜ、新型コロナウイルスが蔓延してから1年半近くになるのに、なぜ、患者のために病床を確保できないのか、コロナに対応できる医師や看護師などの医療従事者を増やすことができないのか。

その大きな理由の一つに日本医師会の存在があるのではないか。

「大半の病院は協力なんかしたくない」

医師会には約17万人の医師が加入している。勤務医もいるが主に開業医の病院経営のために活動する団体だといわれている。

その疑問に斬り込んだのが6月27日にNHKで放送された「検証“医療先進国”(後編)なぜ危機は繰り返されるのか」だった。

NHKスペシャル
NHKスペシャル パンデミック 激動の世界 (12) 検証“医療先進国”(後編)①(写真=NHKウェブサイトより)

大越健介がインタビューした神奈川県医療危機対策本部の阿南英明は怒りを露わにしてこう話した。

「大半(の病院=筆者注)は協力なんかしたくない、コロナとは無関係でいきたい。病院は決して一枚岩ではない。こういう世界の中で1床、2床をどうやって捻出するかということは大変な闘いなんですよ。
医療者が全員即理解をして、その必要性に応じて対応する、そんな甘い世界じゃない」

神奈川県内の病院の8割がコロナ患者を受け入れていないという。

大越は、市内の中堅病院の院長からも話を聞いているが、うちは耳鼻咽喉科など多くの疾患を扱っているため、コロナ患者を受け入れることはできないのだといわれる。

中には、コロナ患者を3人受け入れはしたが、一般患者がいる病室の奥にビニールカーテンで仕切っただけのスペースしかなかった。

なぜこのような未曽有の疫病が蔓延しているのに、国も厚生労働省も日本医師会にコロナ患者受け入れを“要請”できないのか。

中村秀一元厚労省局長は、日本は民間病院が多く国や行政の力が弱いから、要請することはあったが、法律の権限に基づいて強制することはなかったという。

病院自体小規模のものが多いので、「コロナ対応の病床としては(日本は=筆者注)大国ではもともとなかった」と指摘している。