“マインドレス”な状態に陥る現代人

学校では教えてくれませんが、無心というのは人間のデフォルトの状態です。わたしたちは、エネルギーを節約するために一種の自動操縦で動いています。しかし、この自動操縦システムで動いていると、自分の思考・感情・行動、そしてそれらがどう結果に影響するかを意識的に見ないことが多くなるのが欠点です。

そのため「わたしは○○すべき」「あの人はこう思っているに決まっている」という思い込みを生みます。思考もパターン化した方が楽だからです。そうなると、ほかに選択肢があったとしても見えなくなってしまいがちです。

ですから、わたしの仕事の一つは、人々が新しい選択肢を持てるようになるために、自分の思い込みを吟味するのを助けることです。思い込みを捨ててみると、自分が思っていたよりも多くの可能性があることに気づくことが多いのではないでしょうか。

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写真=iStock.com/metamorworks
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実例:夫に遠慮して食事会に行けない

ここでひとつ、わたしたちの間でちょっとした伝説になっている実例をご紹介しましょう。

コロナ禍以前はプログラム終了後に参加者と連れ立って夕食を共にすることが多かったのですが、そんな時ある女性がとても夕食会に行きたがっていました。ところが、事前に夫に断ってこなかったことが気がかりで、躊躇していました。夕食会に参加したいと相談してみたところで夫はきっと怒り出してしまうと彼女は信じていたので、なかなか決断できなかったんですね。

わたしは彼女に「思い切ってご主人に電話して聞いてみたら?」と提案しました。休憩中に電話して、夕食会に参加する旨を伝えることがあなたの新たなミッションです、と。そこで、彼女は実際ご主人に電話をかけ、聞いてみました。

すると、彼女の夫は夕食会への参加を了承してくれたばかりか、行ったほうがいいとまで勧めてくれたのです。彼女にとっては思いがけない結果でしたし、巨大な、宇宙規模の気づきでもありました。だってあまりにも頑なにご主人にNOと言われるだろうと信じていたわけですから。

もちろん、すべての夫がそれほど柔軟ではないかもしれませんが、私が驚いたのは、人は自分が思っている以上に自由であることが多いということです。