専門家も政治家も引っ込みがつかなくなっている

こうした専門家の提言をメディアは検証することもなく垂れ流し、次から次へと繰り出される“悪者コンボ”によって、国民の恐怖心を煽り続けた。そして、そんなビビりまくりの世論を背景に、政治家は場当たりで政策判断を下してきた……というのが現在の日本の情けない状態なのだ。元内閣官房参与で嘉悦大学教授の高橋洋一氏が述べたとおり、日本の感染状況は諸外国と比べれば「さざ波」レベル。でも、「大波」と判断したくて仕方がない専門家や政治家は、人々に「とにかく耐えろ」と要求する。そんなマゾ的状況が、ずーーーっと続いている。

庶民だけでなく、多くの政治家も専門家に洗脳された状態だ。6月15日の会見で田村憲久厚労大臣は「(飲食店での)酒類の提供と新規感染者数に非常に相関関係があることは間違いない」と発言。だが、田村氏はまったくデータを見ていない。チラリとは見ているのかもしれないが、正しく理解できていない。ただ、専門家の煽りを真に受けているだけである。

たとえば、東京都のモニタリング会議の資料を見ると、5月25日~5月31日週の陽性経路は多い順に「同居(50.7%)」「施設等(16.3%)」「職場(15.8%)」「会食(5.1%)」「接待を伴う飲食(1.0%)」「その他(11.1%)」となっている。もしかしたら、専門家は「会食に参加した若者が自宅や職場でウイルスをまき散らしたのです」と田村氏に入れ知恵したのかもしれないが、仮に世間から「その証拠を出せ」とつめられても出せるはずがない。専門家、そして彼らに煽動された政治家は、もはや引っ込みがつかなくなっているからだ。

「酒類の提供と新規感染者数は相関する」は本当か

最初の段階で「酒が悪い」「飲食店が悪い」という設定をつくりあげ、営業自粛、アクリル板設置、席の間隔を空けるなど、これまでさまざまな対策を店側に強いてきた。それだけに「てへっ、従来の悪者設定は間違いでした。本当に悪かったのは家庭と施設でしたね。本当は昨年のうちに『離婚』や『施設からの退去』を皆さんにお願いしておくべきでした♪」なんて言うわけにはいかないのだ。いまさら当初の設定を変えられないだけなのである。

臨時休業する店舗
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

さらに、もうひとつのデータを見てみよう。禁酒令を出しまくった東京都の累計陽性率が1.21%なのに対し、私が暮らす佐賀県は0.32%。およそ4分の1の水準なのだ。これは、東京都と佐賀県が公開している今年5月1日時点の人口(推計)と、6月22日付けの朝日新聞に掲載されていた感染者数の累計に基づいて算出した数字である。

佐賀でも一時期、飲食店の時短営業が実施されたが、基本的に酒の提供については自由だった。ハッキリ言って、佐賀の人々は節度を守りつつも店で楽しく酒を飲んでいた。いくら東京と佐賀では人口密度が違うといっても、それなりに客が入った飲食店の店内は、東京も佐賀も大差ない。でも、4分の1程度の陽性率なのだ。この数字はあくまで私が単純計算した参考値に過ぎないが、少なくとも「酒類の提供と新規感染者数には間違いなく相関関係がある」などと断言することはできないだろう。田村氏は小学3年生レベルの算数さえできないのか。もっとも、ここを突っ込んだとしても田村氏は恐らく「専門家ガー!」と逃げを打つのだろうが。