インドで最初に確認された新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」が引き起こすおもな症状が、従来の系統のウイルスに感染した人とは異なる可能性があることが、研究により示唆された。
「B.1.617.2」とも呼ばれるデルタ株とそのサブ系統は、これまでに70か国以上で見つかっており、一部の地域では急速に広がっている。たとえば英国では、いまや新規感染例の90%以上を占めるようになっている。
症状に関する知見は、アプリを用いて新型コロナウイルス感染症の症状を調査し、感染の広がりを追跡している「ZOE COVID症状調査」で得られたものだ。このプロジェクトは、マサチューセッツ総合病院、ハーバード大学T・H・チャン公衆衛生大学院、キングズ・カレッジ・ロンドン、スタンフォード大学医学部の研究者らが、ヘルスサイエンス企業ZOEと共同で立ち上げた。
ZOE調査に携わっているキングズ・カレッジ・ロンドンのティム・スペクター教授によれば、このアプリによって英国で収集されたデータは、デルタ株のおもな症状が、従来の症状とは若干異なる可能性を示唆しているという。
最も多い症状は「頭痛」?
米疾病予防管理センター(CDC)によれば、新型コロナウイルス感染症でもっともよく見られる症状は、発熱、乾いたせき、疲労感とされている。
だが、スペクターによれば、デルタ株が主流になっている英国では、頭痛、のどの痛み、鼻水がもっとも多くなっているようだという。
「すべてのアプリユーザーのおもな症状を調べてきたが、認識すべききわめて重要な点は、5月はじめ以降の症状が以前と同じではなくなっていることだ。もっとも多い症状は頭痛で、のどの痛み、鼻水、発熱がそれに続いている」と、スペクターはZOEのビデオアップデートのなかで述べている。
「咳は5番目で、比較的少ない。嗅覚の喪失はもはやトップ10にも入っていない。この変異株は、以前とは若干異なる挙動をするようだ」
また若い人では、デルタ株の症状は「ひどい風邪」によく似ているという。
「(そうした症状の変化は)世間では認識されていないし、政府の情報のなかでも伝えられていない。そのため、自分はなんらかの季節性の風邪をひいただけだと考えて、そのままパーティへ出かけ、感染を広めてしまうおそれがある」とスペクターはビデオのなかで述べている。
デルタ株の感染力は従来株の2倍。「きわめて感染しやすい」とスペクターは言う。「とてもくっつきやすいウイルスだ。(ワクチン接種が進んでいることにより)実際に攻撃できる人が少なくなっているのに、短期間でこれほどの感染者が出ているのはそのためだ」