性別を理由にした賃金格差の問題に正面から切り込んだ韓国の『失われた賃金を求めて』が話題だ。日本は、その韓国に次いで男女の賃金格差が大きい。その差はなぜ埋まらないのか、人事ジャーナリストの溝上憲文さんが解説する――。
韓国に次いで世界ワースト2位の男女賃金格差
韓国の男女の賃金格差の実態を描いたイ・ミンギョン著『失われた賃金を求めて』が日本でも共感を呼んでいる。当然だろう。韓国の賃金格差はOECD諸国加盟国中ワースト1位であり、次いで日本がワースト2位だからだ。
OECDの統計によると、男女間の賃金格差は韓国が34.6%、日本が24.5%。欧米諸国が10%台なのに対して2国だけ突出している(フルタイム労働者の中位所得における男女間賃金格差、2017年)。日本の賃金格差は2005年は32.8%だったが、その後緩やかに減少傾向にあるが、それでも依然として格差は大きい。
男女の賃金格差の原因として欧米では性別による職業の偏りがあり、女性が多い職種で賃金が低いという「性別職業分離」が指摘されている。しかし、日本総合研究所の山田久副理事長の分析によると、女性労働者比率の低い職種で高賃金職種がいくつかあるものの、とくに女性比率の高い職種が大きく低賃金職種に偏っているわけではないとしている(「コロナショックが促すジェンダー平等」日本総研、2021年4月23日)。
賃金格差の2大原因
では日本の男女賃金格差が大きい理由とは何か。山田副理事長は①正規・非正規の賃金格差と女性の非正規比率の高さ、②性別役割の固定化と就社型雇用システム――の2つであると指摘する。
「終身雇用を前提とする正社員雇用を守るため、非正規雇用との処遇格差が大きくなる。さらに終身雇用と表裏一体の長時間労働・会社都合の転勤は『男は会社・女は家庭』という男女分業(性別役割の固定化)を前提としており、女性の多くが非正規雇用で働くことになる。加えて、女性は正社員で働いても、結婚や出産を機に退職することが想定され、昇格・昇給が抑制される」(前出論文)