日本はさまざまな少子化対策を講じてきたものの、少子化は改善するどころか加速しています。フローレンスの前田晃平さんはその理由について「出産育児の負担が、女性に偏りすぎているのです。そしてそのことと男性の稼ぐことへのプレッシャー、安心して家事育児ができない状況は表裏をなしています」と指摘します――。

※本稿は前田晃平『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!』(光文社)の一部を再編集したものです。

「私は、お母さんなんだから」

ある週末のことです。妻の友人が生まれたばかりの赤ちゃんを連れて、家に遊びに来てくれました。妻と友人はお互いに赤ちゃんを抱えたまま、リビングで話し込んでいます。私は根暗な性格なので、二人にお茶を出したり、台所で食器を洗ったりしながら、二人の会話にひっそりと耳を傾けていました。

そして、話題が仕事に及んだ時の友人の言葉を、私は忘れられません。

「今の職場だと定時に帰るのは無理だし、フルタイムで復帰なんてできないよね。だから、今の会社でキャリアを積むのは難しいだろうな。保育園のお迎えの時間があるし。夫は色々やってはくれるけど、平日は仕事で帰りが遅いから、しょうがないよね。これまでたくさん頑張ってきたけど……私は、お母さんなんだから」

妻は友人の話に聞き入り、私は黙って食器を洗い続けていました。

九州と四国の人口分が消滅する、2035年の日本

日本の少子化が、止まりません。2019年、日本人の国内出生数は86.5万人となり、1899年の統計開始以来、初めて90万人を割りました。合計特殊出生率(1人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子どもの数の平均値)は、1.36です。2018年の1.42から0.06ポイント悪化しました。

このペースだと、2035年には九州と四国の人口分がそっくり消滅します。この10年の人口減少は400万人ですが、これからの10年では800万人減り、その後の10年では1000万人近く減ります。図表1で平安時代からの日本の人口推移をみてみると、その異常さが際立ちます。まるで、ジェットコースターです。

この状況を打開すべく、政府は少子化対策に力を注いできました。2020年まで続いた安倍政権が喧伝していた「すべての女性が輝く社会づくり」もその一環です。しかし、日本の少子化に改善の兆しは、全くみえません。「3年間抱っこし放題」を実現する育児休業の拡充とか、「3歳からの幼保無償化」とか、たくさんやったのに、いったいなぜ⁉ 政治家の中には、頭を抱えている方もいらっしゃると思います。