非正規労働者の7割近くが女性

女性の非正規労働者は確かに多い。2019年の労働者数は6004万人(総務省「労働力調査」)。うち非正規労働者は2166万人で、女性は1475万人と68%を占める。産業別では卸売り・小売業全体の35%、344万人が女性非正規だ。続いて医療・福祉業の267万人(33%)、宿泊・飲食業の196万人(54%)、製造業の150万人(15%)、サービス業等の111万人(27%)と続く。

もちろん欧米でも非正規が少ないわけではないが、ヨーロッパでは企業横断的に同一労働同一賃金原則が浸透し、日本と比べて正規と非正規の賃金格差は大きくない。

そして日本ではご存知のように今回のコロナ禍では女性非正規が多数を占める卸売り・小売業、宿泊・飲食業、サービス業などを直撃し、女性非正規の賃金が下がるだけではなく、雇用まで奪われるという惨状を呈した。

労働政策研究・研修機構の調査によると、景気が悪化した2020年4~5月期の女性の労働時間と収入の落ち込み幅が男性より高かった。また労働政策研究・研修機構とNHKが合同で6万8000人の雇用者に実施した調査によると、20年4月以降の7カ月間に、解雇や労働時間の激減を経験した者の割合は、男性18.7%に対し、女性は26.3%と4人に1人以上が辛酸を舐めている。

女性の実質的失業者、103万人超え

女性非正規の深刻ぶりは今年になっても変わらない。野村総合研究所が今年2月に実施した調査によると、パート・アルバイト女性のうち29.0%が「コロナ以前と比べてシフトが減少している」と回答。そのうち「シフトが5割以上減少している」人の割合は45.2%に上る。昨年12月の調査(シフト減少25.7%、シフト5割減40.6%)よりも高い。しかも5割以上減少したパート・アルバイト女性は昨年10.4%から13.1%に増えており、悪化のスピードが加速している。

シフトが減少した場合、経営者は「休業手当」を支払う義務がある。企業が支払わない場合は、自分で申請する特例の「休業支援金制度」もある。ところが驚いたことにシフト減のパート・アルバイトのうち休業手当を受け取っていない人が女性の74.7%、男性の79.0%に上っている。

野村総研は昨年12月、「シフトが5割以上減少」かつ「休業手当を受け取っていない」パート・アルバイト女性を「実質的失業者」と定義。総務省「労働力調査」を用いた全国の「実質的失業者」は90.0万人との推計を発表し、大きな話題になった。そして2月の調査では男性43.4万人に対し、女性は103.1万人とさらに増加している。多くの女性非正規の困窮ぶりがコロナで露呈している。