もっと厳しいのはワタミ、政投銀からの増資を受け入れ

図表2はワタミの財務内容です。

ワタミの財務内容

ワタミはグループ全体ではコロワイドよりも規模は小さく、2021年3月期での売上高は600億円を少し超える程度です。売上高の減少幅は、2020年度に比べて33.1%と大きく減少しています。

営業利益に注目してください。ワタミの場合、2020年3月期でも9200万円とわずかしか出ていませんでした。それがコロナの影響を大きく受けた2021年3月期には97億円の赤字、(親会社株主に帰属する)当期純利益は115億円の赤字です。

ここで見るべき数字は、自己資本比率。先ほども説明しましたが、これは企業の中長期的な安全性を表す代表的な指標で、金融機関をのぞいては10%を切ると過小資本とみなすことが多いのです。

それが、ワタミの場合、2020年3月期には34.1%あったものが、巨額の損失を出したため、7%まで落ちているのです。明らかに過小資本です。そして、今後もしばらくコロナの影響が出るとなれば、自己資本比率がマイナス、つまり債務超過にもなりかねません。

もちろん、十分な投資ができる状況にはなく、減価償却費等の10分の1以下の有形固定資産の取得しか行っていません。それにより、資金の流出を極力減らしているわけです。

一方、企業が厳しい状況の場合に、私が何よりも注目するのは現預金です。同社は、2021年3月末で200億円を超える額を保有しており、この点では当面の資金繰りには問題はないと言えます。

しかし、長期借入金の残高が180億円と、その前の期末よりも135億円ほど増加しており、借り入れに頼った資金繰りになっており、このままの業績がしばらく続けば、問題はさらに深刻化します。

そこでワタミは、現預金を潤沢にし、かつ自己資本比率を上げるために、増資を発表しています。具体的には、日本政策投資銀行が120億円の第三者割当増資を行うことを発表しており、6月27日の株主総会で決議される予定です。

ワタミは、居酒屋業態を焼肉店に変更していくことなどで、売上高や利益の向上を図ろうとしていますが、増資により財務的、時間的な余力を得ると言えます。