「政府系金融機関としてのタガが外れたようなものだ」

コロナ禍の現在、政府系金融機関である日本政策投資銀行(政投銀)の存在感が高まっている。

日産自動車や三菱自動車への危機対応融資、上場が延期されているキオクシア(旧東芝メモリ)への投融資、全日本空輸(ANA)への劣後ローン供与、近鉄グループホールディングスや丸井グループへの融資、ロイヤルホールディングスの優先株引き受けなど、経営不振にあえぐ中堅・大企業の駆け込み寺となっているのだ。

その政投銀が官邸の意向を受けて3月29日からコロナ禍で特に深刻な影響を受けている飲食・宿泊等をはじめとする事業者に重点的・緊急的な金融支援策を開始した。

注目すべきは、この支援策に合わせて政投銀の基本とされてきた「民間金融機関との協調融資原則」の適用が停止されたことだ。

財務省
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メガバンク幹部は「政投銀は今後、民間の金融機関が敬遠するリスクの高い案件についても単独で融資できるようになる。政府系金融機関としてのタガが外れたようなものだ」と危惧を口にする。

「コロナ関連融資」はリーマンショックを上回る規模に

政府は2020年度第2次補正予算でコロナ禍に苦しむ企業支援枠として約12兆円を措置した。このうち半分にあたる約6兆円を政投銀や日本政策金融公庫など政府系金融機関による劣後ローンの活用、残る約6兆円を出資などの枠組みとして活用している。

これに加え、飲食・宿泊など甚大な影響を受ける事業者には、従来の「民業圧迫回避」の原則を棚上げして、政府系金融機関単独で資金を流し込もうとしているわけだ。

すでに政投銀のコロナ関連融資は2020年4~9月で約2兆円に達し、リーマンショック直後半年の実績(1兆4000億円)を上回っている。

しかも、政投銀関係者によれば「今年1月に、従来の縦割りで分けた営業部隊とは別に業種を跨いで提案する渡辺社長直轄の新組織を立ち上げ、企業の相談に幅広に対応している」という。