東電の経営を実質的に支えているのも政投銀
さらに政府は、2009年1月に、公的資金を活用して一般企業に資本を注入する制度の創設を決めた。金融危機により一時的に業績不振に陥った企業を国が信用補完し、業務運営の円滑化と経営基盤の強化を狙うもので、産業活力再生特別措置法の認可を受けた企業を対象に、政投銀や民間金融機関などの指定金融機関が企業の優先株取得などで資本支援する仕組みだ。
この企業への資本支援については、仮に出資金が焦げ付いた場合も、政府が日本政策金融公庫を通して5~8割程度を損失補塡することになっているが、裏を返せば、2~5割は指定金融機関が損失を被ることになる。このため民間金融機関は腰が引けた状態で、おのずと出資の担い手は政投銀に限られる格好となった。政投銀の発言力が強まったのは言うまでもない。
そして、極め付きは東日本大震災に伴う東京電力の経営危機だ。福島第一原発事故により原発再稼働が不透明な中、東電の経営を実質的に支えているのは政投銀にほかならない。政投銀はエネルギー政策を人質に取ったようなものだ。
政府系金融機関の完全民営化が反故にされたワケ
実は、こうした政府系金融機関の先祖帰りは、民主党政権下ですでに準備されていた。
政府・与党は2009年の国会で日本政策投資銀行法改正案と商工組合中央金庫法改正案を提出。日本政策投資銀行法の改正は、2013年~2015年とされていた政府保有株の売却による完全民営化を3年半延期する内容で、完全民営化自体を再検討できる「見直し規定」も盛り込まれた。
その上で、「政府が3分の1超の株式を保有」することが付則で明示された。同様に、商工組合中央金庫法の改正においても2015年までの完全民営化を再検討する付則が加えられている。
要は、与野党とも政府系金融機関の完全民営化を反故にする意向で一致していたわけだ。さらに2015年には、日本政策投資銀行と商工中金を2015年度から5~7年をかけて完全民営化する予定であったものを「当分の間」という表現で、事実上先送りした。政投銀、商工中金の完全民営化はすでに葬りさられたと言っていい。