コロナ禍で各地の公共交通が経営危機にある。著書に『鉄道復権』(新潮選書)などがある関西大学の宇都宮浄人教授は「多くの公共交通は、自助努力だけではやっていけない。地域の足を救うために、2つのことを見直す必要がある」という――。
湯布院駅で電車を待つ人々
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コロナ禍で経営危機に直面する公共交通

鉄道やバスなどの地域公共交通は、いっけんコロナ禍以前と変わりなく運行しているように見えますが、現在の利用者数ではまったく採算がとれません。地域公共交通総合研究所が昨年秋に行った調査では、「2021年度末までに5割の企業で事業継続ができない可能性」が示唆されました。

じつは先進国の中で、コロナ禍によって公共交通の経営が危ぶまれているのは日本だけです。なぜなら、欧米では鉄道やバスが赤字なのは当たり前で、もともと公的資金で経営を支える仕組みになっているからです。公共交通は日常生活を支えるエッセンシャルサービスだから、税金で支えるのが当然だという認識なのです。

日本では、地域公共交通も収支が見合うこと、つまり赤字にならないことが求められます。したがって収入が減ったときは、事業者自身で対応しなければならないのが原則です。

しかし、人口が減少に転じた今日、地域公共交通は、自助努力だけではやっていけない状況です。理不尽な運賃の値上げやサービスカットを避けるためにも、従来の交通行政のあり方を早急に見直す必要があります。

鉄道を見直す世界、道路に固執する日本

日本は昨年、第2次補正予算で総額32兆円という大規模なコロナ対策を打ち出しました。そのうち、地域公共交通関連の予算は、感染予防対策として140億円弱の予算が計上されただけです。