「洗濯ボール」「洗濯リング」にも効果はない

4月27日付の東京新聞(*1)によると「1リットル未満の小さなビーカーでの実験結果しかなく、家庭用の洗濯機での効果は確認できなかった。」「宮本製作所は『多大な迷惑を掛け、心よりおわびする。命令を真摯に受け止め、再発防止に努める』とのコメントを出した。」とあります。

洗浄力や使いやすさなどから洗濯用の合成洗剤の生産量は合成洗剤97%、石けん3%です(*2)。合成洗剤や柔軟剤に添加される香料の強い香りが苦手な人、できるだけ使用量を減らしたい人などを中心に、石けん・洗剤を使わない製品に関心が向きました。

そのひとつに「洗濯ボール」があります。鉱石の粒が入った丸いプラスチック容器を洗濯のときに一緒に入れると、鉱石が出す静電気で水の分子集団を細かくし、水分子の動きが活発になるので洗濯ものに水が浸透して汚れが落ちるという効果をうたっていました。

ですが、その説明は科学的におかしいものです。実際に、洗浄力テストをしてみると、水だけで洗ったときと同様の効果しか得られませんでした。「洗濯リング」と呼ばれている商品も同様です(*3)

こうして怪しい製品は消えていったり、消費者から支持されなくなったのですが、そのなかでもアルカリ剤(重曹、セスキ炭酸ソーダ、酸素系漂白剤)で洗う方法は一定の支持を得ています。

(*1)効果なし「洗たくマグちゃん」 実験は小さなビーカーのみ、宮本製作所「心よりおわび」
(*2)日本石鹸洗剤工業会 (JSDA) 洗浄剤等の製品販売統計表(2020年1~12月)
(*3)洗剤要らずを謳う「洗濯ボール」はエコという名のぼったくり?

重曹を使って洗濯すると肌触りが悪くなる

これらの商品の効果は水洗いの効果と変わらず、油汚れやタンパク質汚れ、襟や袖の汚れなどには効果はありません。重曹熱分解水(成分は炭酸ナトリウム)を使うと皮脂汚れと汗の臭いには水よりも効果的です。ですが、マイナス面として風合い(肌触り)が悪くなるという側面もあります(*4)

洗濯機の上に重曹が入った瓶
写真=iStock.com/new look casting
※写真はイメージです

「洗濯マグちゃん」という“洗濯マグネシウム”を使った商品も、アルカリ剤と同様に、石けん・洗剤を使いたくない消費者から支持されてきました。マグネシウムと水が反応して洗濯水がアルカリ性になることによる洗浄効果や、使用時に発生する水素も洗濯に効果があると期待されたのです。

マグネシウムは銀色の金属で、水に入れると水と反応して、水素ガスを発生しながら水酸化マグネシウムに変わります。水酸化マグネシウム水溶液はアルカリ性を示します。ただし、冷水とはあまり反応しません。また、粒状では粉末状と比べてずっと反応が弱いです。

宮本製作所は1リットル未満の水に入れた場合のデータを提出したようですが、実際の洗濯機に入れた場合とは効果が大きく異なります。

以下は、かつて一緒に石けん・洗剤の本を書いたLSアカデミー(生活を科学する会)代表 田嶋晴彦(薬学博士)さんのサイトです。
(*4)uki☆uki☆せっけんライフ アルカリ助剤を使った洗濯は効果あるの?