洗濯マグネシウムの洗浄効果は水洗いと変わらない

1リットルの水の場合、水のpH(酸性・アルカリ性の物差し。7より小さければ小さいほど酸性が強く、より大きければ大きいほどアルカリ性が強い)は、洗濯マグネシウムを入れる前の7.4から9.0に上昇し、水はアルカリ性になっていました。この結果だけ見ると、マグネシウムは効果があるようにも見えます。

ところが、洗濯マグネシウムを実際の洗濯機に入れて、標準モードで10分水洗いを行ってみると、pHはほとんど変わりませんでした。何十リットルもの水がありますから、1リットルの水の場合とは全然違うのです。

溶け出したマグネシウムの量も通常のアルカリ洗濯で使うアルカリ剤の量の1000分の1以下でした(*5)。マグネシウムと水の反応はとてもゆっくりで、洗濯の時間程度ではほとんど反応しないのです。

つまり、“洗濯マグネシウム”だけで洗うことは、水だけで洗うことと同様なのです。水素水になるからという理屈は化学的にはなんの意味もありません。pHが水とほとんど変わらなかったということは、臭い菌への効果は水洗いと同じくほとんどないと考えられます。

(*5)uki☆uki☆せっけんライフ マグネシウムで洗う?

主観的な感想は効果の根拠にはならない

洗濯マグネシウムに限らず、洗濯ボールにしてもアルカリ剤にしても、「洗剤なしで洗える」という根拠がかなり主観的です。それは汚れを落とすということを客観的にテストしていない、とくに水だけの場合とそれを比較していないことが多いからです。

例えば、『食品と暮らしの安全』No.306に、モニター30名に洗濯マグネシウムを使って汚れ落ちの調査をしたものがあります。

「タオル、Tシャツ」「下着」「靴下、ストッキング」「ワイシャツ、ブラウス」「ズボン、スカート」「その他」について、アンケートで①よく落ちた ②少し落ちた ③あまり落ちない ④まったく落ちない を集計したものです。

これで①と回答した人が各種布地で平均59.5%あったから、洗濯効果が十分あると結論づけています。ですが、実際には洗濯マグネシウムを使用した際の水素は発生量もわずかですし、頑固に繊維に絡みついた汚れには効果はありません。

この雑誌は、環境問題をいうなら、水洗いでかなりの汚れが落ちること、あらかじめ水で洗っておくと、本洗の洗浄効果を高め、よりきれいに仕上がることを述べるべきだったでしょう。

固形石鹼と汚れた靴下と洗った靴下
写真=iStock.com/FotoDuets
※写真はイメージです

一般家庭のふだんの洗濯物なら油・脂肪系の汚れが少ないので、水洗いだけでも石けん・洗剤を入れて洗濯したものと比べてもわからないくらいにきれいになります。