夫は躁うつ症状が出ると休職で無給、自分は“ワンオペ”でパニック障害

結婚前は看護師をしていた松野さんは、産後は資格を活かし、ヘルパーの仕事を始めた。育児と家事、仕事に追われ、夫の症状が出ると動悸や不眠の症状が出るようになったため、心療内科を受診すると、パニック障害と診断。精神安定剤や睡眠薬を服用し始める。

夫の不調時の対応に悩んだ松野さんは、心療内科医に相談すると、「旦那さんはおそらく双極性障害でしょう」と言われた。

「夫に躁うつの症状が出るのときは、おそらく仕事上のストレスが原因だと思います。長年勤めていますし、理解がある会社で、症状が悪化するとちょこちょこ休職させてもらっています。しかし休職中は無給なので収入はなくなりますし、夫がずっと家にいるので気がめいります。次男が小学校に上がるまでは本当にしんどかったです」

子どもの頃から走るのが好きだった松野さんは、中学の頃から市の陸上部に所属していたが、結婚や出産を機に活動を休止。次男が小学校に上がってから再開したところ、市役所に勤める陸上部仲間から、「介護認定調査員が不足しているんだけど、挑戦してみない?」と声をかけられ、試験を受けることに。無事合格した松野さんは、ヘルパーを辞め、2008年から認定調査員として働き始めた。

夫と義父のケアに仕事…多忙な中、次男と自分にがんの疑い

2014年。中学生になった次男が熱を出した。風邪だと思って様子を見ていたが、微熱が1週間以上続き、鼻の奥がみるみる腫れてきた。

心配した松野さんが病院へ連れて行くと、「がんの可能性があるので、念のため入院してください」と言われる。入院中は毎日のようにさまざまな検査を受けたが、次第に熱が下がり、鼻の奥の腫れも治まってきたため、10日ほどで退院。その後に検査結果が出たが、がんではなくウイルスによる「単核球症」と診断される。

病院のベッドで点滴を受ける子供
写真=iStock.com/kckate16
※写真はイメージです

単核球症とは、発熱やリンパ節の腫れなどの症状を起こす急性感染症だ。数週間で症状が治まっても、肝臓や脾臓が肥大化している場合があり、腹部に衝撃や圧力がかかると破裂することがある。脾臓が破裂すると、出血性ショックで重篤化する危険性が高いため、肥大した状態が治まる2カ月ほどは、転倒や打撲、外傷に気をつけ、力仕事や人と接触するスポーツは避けたほうがいい。

松野さんと同じように陸上部で活動していた次男は、「2カ月くらい、激しい運動は避けてください」と医師から告げられ、残念そうな顔でうなずいた。

その翌年、市の健康診断を受けた松野さんは、子宮で再検査となり、婦人科を受診。超音波検査などの結果、「高度異形成」と診断される。

高度異形成とは、子宮頸がんの一歩手前の状態だ。すぐに細胞診を行い、異常が認められれば、組織診を行い、確定診断となる。

松野さんは入院し、病変部分だけを取り除くか、子宮全部を摘出する手術を受けるか選択を迫られる。松野さんは「子どもは3人産んで、もう産むことはないだろうから、子宮を摘出してもいいかな」と判断し、子宮の全摘出手術を受け、1週間ほどで退院。その間子どもたちは実家の両親に世話になり、夫は義実家へ行っていた。