「私はいつも我慢しているのに」不満が爆発

何か言い返すたびに奈々子さんのボルテージは高まっているようです。悟さんは頭が痛くて休んでいるだけなのに、なぜここまで責められているのかが理解できません。

たまたま虫の居所が悪く八つ当たりされただけのような気がして、不愉快な気分です。

(体調が優れないときくらい優しくしてくれたって良いじゃないか。付き合っていたころや、新婚当初はあんなに大事にしてくれたのに……)

ところが、奈々子さんは八つ当たりしているわけではありませんでした。努力家で責任感の強い彼女は、多少体調が悪かったとしても、そんなそぶりをいっさい見せまいと努めてきたのです。微熱くらいで寝込んでしまっては家庭を切り盛りすることはできない。ましてや、一人ではまだ何もできない赤ん坊が目の前にいるのだから、泣き言をこぼすわけにはいきません。だから、きつくても疲れていても頑張り続けていたのに、夫は微熱で大騒ぎをしている。「私はいつも我慢しているのに」と不公平な状態にあることに、不満が爆発してしまったのです。

台所
写真=iStock.com/kohei_hara
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妻も本当は、夫に優しくしたいと思っている

「きついならきついと言ってくれれば手伝うのに」と思うのが男性です。しかし、母親になった女性たちは「自分がしっかりしなくちゃ」と常に気を張っています。

自分から「きつい」と言えない妻に対して、必要なのは「観察」です。無理をしていないか、平気なふりをしていないか、普段と違う様子はないか。観察をして気づくことができれば、優しい声をかけられます。妻が求めているのは励ましの言葉や応援する言葉ではなく、「いつもありがとうね」「つらくない?」という労いの声かけなのです。

それだけで「私のことを見てくれている」「大切にしてくれている」と感じ、優しい気持ちになります。

妻も本当は、夫に優しくしたいと思っています。しかし、それだけの余裕がないのです。夫としてできることは、妻の心に余裕がないと思ったら、手を差し伸べてあげること。それだけで二人の関係はぐっと改善されるでしょう。