「から揚げが食べたい」の何がダメだったか

可奈子さんは、すぐに自分が怒っている理由を分かってくれない大吾さんに対して「この人に言っても無駄」と諦めモード。こうして、コミュニケーションの遮断が起きてしまうのです。夫からすると、「助けてほしい」「こうやって手伝ってほしい」と言ってもらえればそうするのに、言ってくれないから分かるはずがありません。

東野純彦『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎)
東野純彦『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎)

しかし可奈子さんは「外食しよう」と伝え、「惣菜コーナーを見ている」ことで「今日はごはんを作りたくない」というメッセージを発していたつもりなのです。にもかかわらず「から揚げが食べたい」と言われた。つまり「自分がから揚げを作るしかない」と受け取ったのです。

もちろん大吾さんはそこまで完璧を求めてはいませんでしたが、母親になり、家事に対して責任感を持っている可奈子さんは「自分がやらなきゃ」と思ってしまった。

さらにいえば、妻は夫に、父親として母親と同じレベルの意識改革を期待しています。それなのに、妻の様子や家庭の状況と関係なく「自分がやりたいこと、食べたいもの」を言ってしまう夫に対して「協力する気がない」とがっかりしてしまうのです。

夫婦喧嘩を確実に減らせる「たった一つの解決法」

このような男女の間によく起きるミスコミュニケーションは、たった一つの方法で解決できます。それはお互いの状況を共有し、「どうしてほしいか」をはっきりと言葉で伝えること。すごくシンプルですが、男女の違いを理解していないと「それが必要である」ことに互いに気づけません。でも、気がつきさえすれば、誰でも実行できます。

もしも妻から「食事を作りたくないときもあるから、そのときは外食しよう」とか「愚痴や弱音を聞いてほしいときがあるから、そんなときは異論を唱えず、ただただ受け止めてほしい」という気持ちが聞けていたら、おそらく夫の反応は違っていたはずでしょう。

しかし、女性がそのように振る舞えないのは、産後、心も身体も疲弊していてそれだけの余裕がないからです。男性に求められているのはその状況を理解し、大変さやつらさを察してあげられるように努めることです。

それでも、男女は違う生き物ですから、完璧に相手のことを察することなど不可能です。だからこそ夫は、妻に対して「大変なときやつらいときには気がつけるよう最大限努力する。でも、気がついていないときは言葉にして教えてね」と伝えてほしいのです。

気恥ずかしい面があるかもしれませんが、このシンプルなコミュニケーションを意識するだけで、夫婦喧嘩の回数は格段に減るはずです。

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