やり抜く力に代表される「非認知能力」は、将来の成功に影響するとされ幼児期からの育成が注目されてきました。しかし、脳科学が専門の細田千尋さんは、そこには誤解があると指摘。「非認知能力は思春期、青年期以降も伸びていく能力であり、その発達には家庭での親の養育態度が大きく影響する」と話します――。
ハサミでクラフトを作る女の子
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです

非認知能力に“三歳児神話”が出現

最近よく、「子どもの非認知能力を育てるにはどうしたらいいのでしょう?」という質問を受けます。「3歳までが重要と、研究で示されていると聞きました、本当でしょうか?」ということまで聞かれて、3歳児神話が新たなかたちで生まれていることに愕然とします。また、幼稚園やお教室などの先生が、非認知能力を育む必要性を力説されているのを耳にすると、一般的にはまだ誤解の多いことを痛感します。

そこで今回、「非認知能力」における誤解と、「非認知能力」を伸ばすのに重要な要因についてご紹介していきます。

「非認知能力」の説明で対比として多く用いられているのが、認知能力という言葉です。これらの説明では、「認知能力は学力のように数字で表せるものを指し、忍耐や社会情動知能(コミュニケーション力など)が非認知能力。この非認知能力を子どものうちに育てることこそ、将来の成功につながる」といった程度のものが大半を占めており、多く人の認識もこのようなものでしょう。

認知機能と非認知能力のバランスが重要

ここで起こっている大きな勘違いの一つが、認知能力をとても狭義にしか考えていないことです。例えば、子どもがお友達と仲良くお喋りができるようになる(相手に対して適切なコミュニケーションを取れる)ことも、認知能力の発達の一部です。お友達の表情を認知し、相手の気持ちを考える視点に立ち、自分の行動や発言を決める、というプロセスは、認知的な機能の繰り返しによって行われるものです。つまり、コミュニケーションを上手にとる(社会情動知能の発達)、という一見非認知能力とカテゴリされがちなものも、認知能力の発達が必要なものであり、認知能力と非認知能力は両方のバランスが必要なのです。

こういった背景もあり、昨今学術的には、「非認知能力」という誤解を与える言葉の使い方自体を疑問視する声が多数上がっています。