最近の研究では「マシュマロテスト」も疑問視されている

「やりぬく力」に代表されるような非認知能力をまず伸ばしましょう、という謳い文句がそこらじゅうで見られるようになった背景には、ノーベル経済学賞を受賞したヘックマンの研究があります。彼は、“社会で成功して経済格差をなくすためにも、テスト(認知機能)では測れない、意欲や長期計画を実行する自己制御力、他人と協働するのに必要な社会的・感情的制御という「非認知能力」を伸ばす教育が重要で、幼児教育(未就学児)に投資すれば、効率的に社会的格差が解消される”ということを主張しました。

この研究は、経済格差が大きい地域での、低所得者に対する効果を示すものでしかありません。近年、この研究の再現ができないことも示されています。また、ヘックマン以前には、マシュマロテストとして、幼児が目の前のマシュマロを我慢して食べずにいられるかどうかが、将来の学力や成功を予測するという研究が有名でしたが、こちらもその妥当性が問題視されています。

マシュマロ
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つまり、“未就学児(~5歳)”の時に、どのくらい辛抱強いのか、あるいは、その時にどのくらい教育がされていたかが、将来の成功を予想できるとするというのが、低所得者層でない多くの一般の人にもあてはまると考える科学的妥当性は、現状ありません。

非認知能力は、むしろ後から伸びるもの

科学的には、むしろ、認知能力の発達よりも非認知能力の発達の方が後から伸びていくことが示されています。

IQが7歳くらいで一定になるというのに対して、自己制御、やり抜く力や社会情動知能などは、特に思春期、青年期以降にも伸びていくものであることがいくつかの研究から示されています。私たちの研究からも、GRITに必要な脳部位である前頭極という場所は、思春期にかけて緩やかに発達していく部位で、成人を過ぎてからも発達することがわかっています。