コロナ禍で膨らんだ財政赤字をどう穴埋めするのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「さらなる財政出動、日銀の国債買い取りを主張する政治家やMMT論者、統合政府論者は無責任極まりない。選挙イヤーの今こそ増税の議論をすべきだ」という――。
財政出動と増税をセットで示した米政権
アメリカのバイデン大統領は、3月31日、8年間で2兆ドル(約220兆円)を投じる長期経済政策の計画を発表した。すでに成立した200兆円規模の経済対策から矢継ぎ早に大規模な財政出動を発表した。
米国の借金は対GDP比で131%。比率で言うと日本の半分に過ぎない。それなのに共和党はさらなる巨大財政支出に反対し、これ以上の財政悪化を食い止めようとしている。
一方のバイデン大統領も財政悪化にはそれなりに配慮し、その財源として、トランプ前大統領が引き下げた法人税率を21%から28%に引き上げる方針も示した。15年間で275兆円もの増税を予定している。1年平均18兆円になるが、これは生半可な増税額ではない。
日本の2021年度(令和3年度)予算において法人税収予測は、たったの9兆円なのだから年平均18兆円の増税とは巨大だ。
すでに税収で借金返済が難しいのにもかかわらず、更なる財政出動を主張する政治家が少なからずいて、増税に関する議論が政党からもマスコミからも出てこない日本とは大違いだ。米国の社会はまだ健全といえる。