一般社団法人良いお寺研究会の調べでは、仏教界全体(寺院数約7万7000カ寺)の総収入は、コロナ禍前は約5700億だったが、2020年は約2700億に減った。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「3密回避のため法事は減り、葬儀も簡略化されるケースが劇的に増えた。コロナ禍が長引けば、経済的に困窮し消滅する寺院が増える。その影響は国民にも及ぶ」という――。
増上寺と東京タワー
撮影=鵜飼秀徳

コロナ禍でさらに経済的に困窮する寺院が増えていくのは必至

コロナ感染症の拡大が、お寺の世界にどれほどの影響を与えているのか。仮にコロナの流行が今後も続くならば今後、仏教界はどうなっていくのか――。

私が代表理事を務める一般社団法人良いお寺研究会(東京都品川区)はこの度、「コロナ感染症流行による寺院収入への影響と未来予測」を調査・分析した。

調査の結果、寺院収入総額がこのコロナ禍によって、およそ半分近く減少している可能性があることがわかった。コロナ禍が長引けば、さらに経済的に困窮する寺院が増えていくとみられる。コロナ禍が「寺院消滅」を、より加速化させる可能性がある。

良いお寺研究会では、これまで社会変動が寺院運営に及ぼす影響を調査してきている。このたび、仏教界全体の市場規模を割り出し、コロナ禍による寺院収入への影響を複合的に分析した。

それによると現在、仏教界全体(寺院数約7万7000カ寺)の総収入(市場規模)は、コロナ禍前の水準で総計約5700億円(非収益事業と収益事業の合計)とみられる。大手教団(宗派)が実施している寺院調査(宗勢調査)を基にして算出した。2005年では約4000億円規模の水準だった。寺院を取り巻く経済は近年、急激に成長してきていたことがわかった。

仏教界の総収入は約5700億円が→2700億円に急減

ところが、同会の調べでは、2020年では約2700億円(前年比約47%)もの減少となっている可能性がある。それを裏付ける別の調査もある。

一例を挙げれば、公益財団法人全日本仏教会は、昨年8月に大和証券と共同調査した「新型コロナウイルス感染症が仏教寺院に与える影響」(6192サンプル)を発表。例えば、年間を通して多くの布施が見込める「お盆の布施金額の総額」は、例年に比べて46.7%まで落ち込んだと報告している。なお、もっとも落ち込みが大きかったのは、コロナ感染症が拡大した関東地区(32.7%)だった。

また、各宗派のコロナ影響調査でも、軒並み寺院収入の落ち込みが明らかになっている。曹洞宗が昨年6月に発表した「コロナ影響調査」では79%の寺院が、浄土宗の同様の調査では84%が前年同期間と比べた寺院収入が「減少した」と回答している。

こうした各種調査などをふまえ、2020年と同等のコロナ感染症の拡大が今後も続くならば、法事や仏教行事などの開催が危ぶまれ、さらに寺院収入が減少していく可能性がある。