「相手にやらせる」ことで責任を押し付ける
「面倒なビジネスプロセスを他人に押し付ける」という考え方は、実は日々の仕事でも活用できる。
たとえば広告代理店がクライアントに対してクリエイティブ案の提案を行う場合、用意する3案のうち2案は「当て馬」として、1案だけ「本命」を入れるというやり方がある。提案する時点で本命が選ばれることは自明なのだが、クライアントは「自分で決めた」ということになるので、たとえ施策が失敗したとしても双方に責任があることになる。これが1案だけの場合は、「提案が悪かった」として責任を追及されてしまう。
また、上司との日常の会話においても、自分の考えを持っておきながらも、あえて上司にアイデアを出させ、「さすが、課長は天才ですね!」などと適当におだてて、仕事をすすめるというのも良い方法のひとつであろう。
プロセスにエンタメ性をもたせることで作業を面白くする
冒頭のIKEAと焼肉の例に戻ると、ただ「作業を客に押し付ける」のではなく、「その作業にエンタメ性を持たせる」というのが隠れたもう一つのキモである。IKEAであれば、DIYという文脈で、家具を組み立てるのが楽しいという人は少なからずいるし、焼肉でも「みんなでワイワイ焼くのが楽しい」という経験をしたことがある人は結構多いだろう。
ここまで書いてきたが、この記事を読んで、「よし、俺も“自習サポート型の塾”で大儲けだ!」と思う人ははっきり言ってビジネスに向いていない。重要なのは、儲かるビジネスの陰にどのような考え方が潜んでいるか、また、消費者としてはどのような罠が潜んでいるかをドライな目で見抜くことこそが重要な点である。
そして、その視点を日頃の仕事でも生かせないか、と考えることこそがさらに重要なのだ。私たちはビジネスマンであると同時に消費者である。ビジネスの仕組みを知ることは、消費者としてもよりよい選択をすることに繋がる、また消費者として良い選択をすることが、回り回って良いサービス提供、ひいては良い社会に結びついていくと筆者は考えるのである。拙著『金儲けのレシピ』から、儲かるビジネスの仕組みを盗んで欲しい。