なぜ大塚家具はビジネスモデルの変更に失敗したのか。東大在学中に起業し、現在年商10億円の企業を経営する事業家bot氏は「非合理な意思決定をしても顧客の満足度は下がらない、ということを知るべきだ」という――。

※本稿は、事業家bot『金儲けのレシピ』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

なぜ大塚家具は失敗したのか

2015年以来、お家騒動が続き大きく業績を悪化させ、企業価値を毀損してしまった大塚家具。

ヤマダ電機との提携について取材に応じる大塚家具の大塚久美子社長=2020年6月19日、東京都新宿区
ヤマダ電機との提携について取材に応じる大塚家具の大塚久美子社長=2020年6月19日、東京都新宿区(写真=時事通信フォト)

後継社長となった創業者・大塚勝久氏の娘である大塚久美子氏が志向したビジネスモデルの変更は、ざっくり言うと、高価格帯から中価格帯への変更と、会員制の廃止であった。

私もかつて親に連れられて台場の大塚家具に行き、親が数十万円の家具を買う(買わされる)のを観察したことがあるが、販売員が最初から最後まで横について、いかに大塚家具の商品が素晴らしいかを力説しつつ営業するという仕組みであった。

即ち、大塚家具の強みは、

・会員制によるプレミアム感の演出
・会員制を前提とした密着営業
・結果として高価格帯の家具が販売できる

というビジネスモデルであった。

つまり、大塚家具は「家具屋」というよりは「高級有形商材販売業」といったほうが適切なビジネスモデルであったわけである。

大塚久美子氏は一橋大学経済学部を卒業した才媛であり、恐らく優秀であったことは想像されるが、本質的な意味でのビジネスモデルの理解があったかどうか、私としては疑問である。