人件費はそのままに、経費を下げることができた

1つエピソードがあります。

武蔵野はここ数年、ずっと業績好調で、20年の2月には過去最高売上高、過去最高利益が見えていました。でも、そこにコロナがやってきた。売り上げがガクンと下がって、今のままでは駄目だということが目に見えてわかりました。そこで仕事の進め方を変えたのです。売り上げは下がって、粗利も下がりました。でも、人件費はそのままに、経費を下げることができたから、経常利益は前年並みを維持できました。

小山 昇・著『社長、採用と即戦力の育成はこうしなさい!』中小企業が生き残るために必要な、人材採用と育成について語る小山氏の最新著作。
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経費を激減できた理由は、今から3年半前に280人の社員全員にIPadとIPhoneを購入していたことが挙げられます。アルバイトの人たちにも渡していました。

私用で使っても構わないと言ってきましたから、社員はこれでインターネットもゲームもできると大喜びで自宅にネット回線を繋ぎました。緊急事態宣言で、リモートワークを一気に進めないといけないとなったとき、こうして事前に投資をしていたおかげで、すぐに在宅勤務の体制を整えることができたのです。

オフィスへの通勤手当がいらなくなり、お客様訪問で今まで使っていた新幹線代や、セミナー開催のために借りていたホテル代など、経費を大きく削減できました。効率化で、前よりも仕事のスピードも上がりました。

IPadとIPhoneを購入するのに、1億円ほどかかりましたが、経費として使ったその1億円が資産になっているから、このコロナ禍のピンチにも対応できたのです。

もちろん、上場している会社は株主のほうを向かないといけないから、利益を残さないとは言えない。上場しなければ、お客様や従業員のほうを向いて仕事ができます。だから、武蔵野は上場をしていません。

今、280人の社員全員に命じて、PCR検査を毎月受けさせています。それも会社の費用です。

今の時代は「安心・安全」が一番重要です。たしかにPCR検査を社員全員に毎月受けさせるとなれば、経費はかかります。でも、そういうことに使うお金は安いものです。

PCR検査をして、お客様のところへ「陰性です」と通知を持って訪問すれば、コロナに感染しているかわからない人が来るより安心できますよね。社員の家族にとっても、会社がそこまでやってくれるのかということで、また安心です。

ケチな人たちは、なかなかお金を使おうとしません。そんな経営者ほど「新卒採用は割に合わない」と語ります。しかし、新卒採用は企業が成長し続けるために不可欠な投資だと考えるべきなのです。

(構成=加藤圭悟 撮影=大槻純一)
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