コロナ禍で飲食店は時短営業を余儀なくされ、休業や廃業が相次いだ。日本フードサービス協会前常務理事の福田久雄氏は「一律の時短営業はコロナ対策としては科学的な根拠に欠けた、単なる『安心』のためだけの施策だ。『安心』が優先されるこの構図は20年前のBES問題と重なる」という――。
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写真=iStock.com/Fiers
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コロナ禍とBSE問題の意外な共通点

今回のコロナ禍で、思い出すことがあります。BSE、牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病問題です。

メディアでは、連日、バタバタと倒れる牛を映し出しては、その恐ろしさを伝えていました。その姿がいまも記憶に焼き付いている人も多いのではないでしょうか。

日本では2001年に、アメリカでは2003年にBSEに感染した牛が発見されましたが、アメリカで発見された2003年12月23日、わたしは、アメリカ大使館の農務部に勤務しており、日米政府窓口として、この問題に対処しました。

発生が確認されてすぐの24日の朝の早朝5時に農林水産省へ報告に来てほしいと連絡がありました。ところが、そのすぐあとにまた電話がかかってきて、メディアが殺到しているので別の場所にしてほしいと。結局そこにもメディアが殺到しており、たいへんな騒ぎになっていました。

アメリカから牛肉が入ってこなくなる……と、流通産業、外食産業、食品加工産業など大混乱です。

それからの数年は、アメリカの牛肉の最大のユーザーであった吉野家の安部修仁社長(当時)や外食産業のリーダーの方々と、一日も早い輸入再開を目指し、立場を超えて意見交換する機会が増えました。

このBSEとコロナとが、なぜかぶって感じられるのか。それは、政府の非科学的な対策、とメディアの無責任な報道などのせいです。