「断らない」をポリシーとしてきたという生き方

彼女にはその手法で上り詰めたという自負がある。だから、こうアドバイスする。「イベントやプロジェクトに誘われたら絶対に断らない。まあ飲み会も断らない。断る人は二度と誘われません、幸運に巡り会う機会も減っていきます」。そして、例のセリフになる。「まあ私自身、仕事ももちろんなんですけど、飲み会を絶対に断らない女としてやってきました」。

先ほど書いたように、私も飲み会は断らない女だった。余計な話だが、入社して最初に褒められたのが、字の大きさとアルコールの強さだった。単純にうれしかったが、まあ無自覚に飲んだだけのことだ。ただし、これは私だけでなく、同世代で「長」がつく職務についた女性には、案外「飲むことを苦にしない」タイプが多かったように思う。

お酌をする手元
写真=iStock.com/kanzilyou
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ところが、山田さんは違う。「飲む」にも戦略性というか、迫力があふれている。何かと言うなら、「絶対に」だ。「絶対に断らない女としてやってきた」とはつまり、「断らない」をポリシーとしてきたということの表明。同学年として、これ、すごいと思う。

なぜ彼女ほどの女性が表舞台から去ることになったのか

「雇用機会均等法」以後の後輩を見て驚いたのが、「均等だったのは、雇用機会だけじゃないか」と怒っていたことだ。

入社後も男女関係なく、メインストリームを歩めると思っていた。それなのに、現実はゴリゴリの男社会。約束と違うじゃないかと怒っていた。彼女たちを見て、自分はメインストリームの手前も手前、「会社に入れていただけただけでありがたい」と思っていたことに気づいた。そして、私ほどではないにしても、均等法以前の女性で、最初からメインストリームを歩く気まんまんというタイプは少なかったように思う。だから、山田さんってすごいなー、と素直に思う。

一方で「飲み会」を語る山田さんを見て、この動画、からかわれてしまうのも無理ないなあ、と思ったりもした。官僚としての慎重かつ賢い言葉遣いの向こうから、自己愛というか全能感というか、そういうものが透けて見えるのだ。「7万円もごちそうされちゃったのねー」という目で見ると、それが役人のおごりのようにも感じられる。

繰り返すが、山田さんはすごい女性だ。自ら地図を描き、堂々と歩いてきた。それなのに、追い詰められる形で表舞台から去ることになった。それが男社会の現実だったとすると、なぜ彼女ほどの女性がそういうことになってしまったのだろうと思う。