私も「飲み会を断らない女」だったからよくわかる
山田さんは、「女性初」のポストを次々ゲットしていった人だ。2013年、安倍晋三内閣で「女性初の内閣総理大臣秘書官」になり、15年に「総務省初の女性局長(情報通信国際戦略局長)」、16年に「全省初の女性大臣官房長(総務省大臣官房長)」になった。総務審議官という同省の女性初の次官級ポストについたのは、この動画の前年。しみじみとわが身を振り返り、「私は幸運を引き寄せてきた」という自己肯定感でいっぱいだったろう。
では、彼女の思う「幸運を引き寄せる力」とはどんなものなのか。最初に言ったのが、「実績をあげられるプロジェクト」「チャンスをくれる人」に巡り会う幸運をみなさん願うと思います、だった。幸運=上へ行かせてくれる「こと」と「人」に出会うこと。そう山田さんは定義する。
少し自分の話をさせていただくと、私は山田さんと同学年だ。山田さんが1960年生まれ、私は早生まれの61年生まれ。私は83年、山田さんは84年に就職した。新聞記者と国家公務員。職種は違うが、86年施行の「雇用機会均等法」以前に仕事を始め、そこから長く働いたという点では同じだ。私も「飲み会を断らない女」だったから、山田さんのメッセージはよくわかる。
「チャンスをくれる人」を見つけにいって努力する
当時、ほとんどの職場には男性しかいなかった。今ではそういう男性同士がうごめいている世界を、「ホモソーシャル社会」と正しく表現するようになった。が、当時はそういう言葉もなく、そこに入っていった女性はとにかく手探りで進むだけだった。
ホモソーシャル社会は、男同士で評価したりされたりするのがデフォルトだ。山田さんのメッセージにならえば、女性に「チャンスをくれる人(=男性)」は非常に珍しい。そして、チャンスをくれる男性がいなくては、「実績をあげられるプロジェクト」にもよばれない。だから、そういう人に出会ったら超ラッキー。女性を評価する男性は、それだけで見る目がある。だから、その人についていくぞ、オー。若い頃の私は、そんなふうに生きてきた。
そして、ここからが山田さんの山田さんたるゆえんになる。山田さんはビデオの中で、こう続けた。「しかし、良いプロジェクトや人に巡り会う確率というのは、人によってそう違うはずはありません」。違いは、「多くの人に出会い、チャレンジしているか」である、と主張していた。
つまり山田さん、「(女性に)チャンスをくれる人」に会うためには、出会いの回数を増やさねばならない、と言っているのだ。「出会えたらラッキーだからついていく」が私なら、「見つけにいって努力する」が山田さん。これはまるで違う。