菅首相は「体調不良ならやむを得ない」と突き放した

山田真貴子さんが3月1日、内閣広報官を辞めた。2月25日の衆院予算委員会では東北新社からの接待は認めた上で、「職務を続けていく中で、自らを改善していきたい」と辞任を否定していた。それなのに、「体調不良→入院→辞表提出→受理」と一転。東北新社に勤務する息子の父である菅義偉首相も「女性の広報官として期待しているので、そのまま専念してほしい」(24日)から一転、「体調不良ならやむを得ないと判断した」(1日、衆院予算委員会)と突き放した。

衆院予算委員会に臨む参考人の(右から)山田真貴子内閣広報官、総務省の谷脇康彦総務審議官、吉田真人総務審議官、秋本芳徳前情報流通行政局長=2021年2月25日、国会内
写真=時事通信フォト
衆院予算委員会に臨む参考人の(右から)山田真貴子内閣広報官、総務省の谷脇康彦総務審議官、吉田真人総務審議官、秋本芳徳前情報流通行政局長=2021年2月25日、国会内

菅首相が当初「広報官留任」と判断したのは、「自分の息子のせいで、自分の抜擢した広報官が辞める」ということを既成事実化したくなかったからだと思う。26日に予定していた記者会見を取りやめたのは、ほとぼりを冷ますつもりだったろう。が、「山田広報官隠し」と批判され、会見代わりの「ぶら下がり」でも結局、接待問題を聞かれた。どうしても「息子&山田」となるという事態にいら立ち、流れは一気に辞任へ。そんなふうに想像する。

だけど、こんな展開、素人の私だって想像できる。菅首相という人の、読みの甘さ、政治センスのなさに加え、冷たさも見えてしまった。「守らないなら、最初から辞めさせてやれ」と思う。体調が悪くなるほど、追い詰められた山田さん。接待を受けたことは十分に問題だが、もっと別な幕引きができたはずだ。

なぜ「飲み会を断らない女」という話題を出したのか

森喜朗さんをきっかけに広まった言葉でいうなら、山田さんは「わきまえている女」に違いない。だからこそ、内閣広報官にまで上り詰めた。そして、非常に戦略的に上っていった人だ。「飲み会を断らない女」と自らを語って話題になった動画は、現在非公開になっている。が、すべてを見ると、実に奥の深い「山田流戦略解説」になっていた。

改めて説明すると、山田さんが総務審議官だった20年6月、「超教育協会」(会長・小宮山宏元東大総長)の求めに応じて寄せたものだ。これからの若者に3つのメッセージがあると言い、最初の2つを「ニューノーマル」「グローバル社会」と語った。どちらも「ネット社会とネット活用が大切だから、こういうことをしなさい」という内容で、超教育協会の「IT教育推進」という設立趣旨に添ったものだ。

そして3つ目は「幸運を引き寄せる力」で、ここに「飲み会」が出てくる。協会とまるで関係のない内容で、彼女にしてみればサービスというか親切心というか、「最後に、いいこと教えてあーげる」だっただろうと想像する。

で、なぜそれが「幸運を引き寄せる力」だったかといえば、自信があったからに違いない。