2019年の児童ポルノ事件の被害者は過去最多の1559人だった。4年連続で1000人を超えている。特にSNSで知り合った人から、裸や下着姿の写真を送信させられる「自撮り」の被害が増えている。いったい何が起きているのか。元埼玉県警の捜査一課刑事でデジタル捜査に詳しい佐々木成三氏が解説する――。

※本稿は、佐々木成三『元捜査一課刑事が明かす手口 スマホで子どもが騙される』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

ベッドの上でうずくまりスマートフォンを遠ざけている女の子
写真=iStock.com/sestovic
※写真はイメージです

最初は優しかった相手から「裸の写真送ってよ」

中学1年生のアユミは最近スマホが手放せない。

中学入学のお祝いに、やっとスマホを買ってもらえたのだ。

学校ではスマホの使用は禁止だけど、帰宅するとすぐに部屋に閉じこもり、スマホでゲームをするのが日課だ。

今日も寝転がってゲームをやりながら、ふとゲームアプリの掲示板を見ると、

「無料でLINEのスタンプをあげます!」

という書き込みを見つけた。

軽い気持ちで「ほしいです!」と返事をすると、すぐに、返事が来た。

何回かやりとりしていると、最初は優しかった相手の態度が変わってきた。

「無料でスタンプだけあげるわけないだろ。裸の写真送ってよ」
「……えっ」

無視しようと思った。このままやり過ごせばきっと大丈夫。

相手からさらに追い討ちをかけるような返事が来た。

「写真を送らないと、学校に行けなくなるぞ」

……無視、無視。このままスルーしちゃおう。

女の子からのメッセージ「実は私も同じ目に遭ったの」

すると、そのやりとりを見ていたらしき女の子から「大丈夫?」とメッセージが来た。たまらなく不安になり、「どうしよう。無視してもいいよね?」と相談すると、「実は私も同じ目に遭ったの」という。どうやら私と同じ年齢の女の子のようだった。私は安心して、不安な気持ちを彼女に打ち明けた。

それからだ。彼女から次々と恐ろしいメッセージが届き始めた。

「私も最初は無視していたんだけど、やりとりしていくうちに私のこといろいろ調べたらしくて、名前も通っている中学もバレちゃったの。それで学校にもあることないことデマを流されて」
「どんなにデマだって言ってもダメだった。おまけにネットでも嘘のデマをさらされちゃって……」
「親も学校に呼び出されて、最終的には学校にいられなくなって、転校することになっちゃったんだ」
「私が早く写真を送っていれば、こんなことにはならなかったかも。いつまでも送らないでいると、何をしてくるかわからないよ。送っちゃったほうが早いよ」
「1回送っちゃえば大丈夫だから。しつこくはしてこないよ」
「“すぐに削除して”って頼んでおけば大丈夫だよ」