SNSやオンラインゲームを通じた子どもの誘拐や監禁事件が後を絶たない。なぜ子どもは犯人と出会ってしまうのか。どうすれば防げるのか。元埼玉県警の捜査一課刑事でデジタル捜査に詳しい佐々木成三氏が解説する――。

※本稿は、佐々木成三『元捜査一課刑事が明かす手口 スマホで子どもが騙される』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

自宅の座卓でスマートフォンを見ている日本の女の子
写真=iStock.com/show999
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スマホゲームに夢中になったアオイの話

アオイは小学6年生の女の子。

学校が終わって、外で友だちと遊ぶのも楽しいけれど、最近はスマホのオンラインゲームに夢中になっている。

人気のバトルゲームは、対象年齢は15歳だけど、スマホ版の対象年齢は12歳。でも実は、ママが「リビングでやるならいいよ」って言ってくれるから、5年生のときからやっている。

オンラインゲームでチャットをするようになったのは最近だ。ゲームが強くて、いつも助けてくれる「優しい相談相手のお兄さん」。

今年に入ってママが「勉強しなさい」とうるさく言うようになった。来年はもう中学生なんだから、遊んでばかりじゃ置いていかれるよ、だって。

でも私は勉強があまり好きじゃない。

置いていかれるって、誰に? 意味わかんない。気分次第ですぐ怒るから、ママが忙しそうなときやイライラしているときは、近づかないようにしてる。

そんなときは部屋に閉じこもって、勉強しているふりをしてオンラインゲームをやる。

ゲームをしているときは、嫌なことは忘れられるし、本当に楽しいから。

この間、部屋でこっそりゲームをやっていたら、いきなり部屋のドアを開けたパパに見つかって怒られた。

ママがかばってくれるかと思ったら、「そんなことだったらもう、スマホを持たせないわよ!」と怒った。

「自分だって夕飯のときにLINEばっかりやってるくせに。人のこと言えないじゃん!」

言い返してドアを思いっきり閉めた。

あーあ、面倒くさいなあ。

ママとパパに監視されているような気がして、リビングでゲームもやらなくなった。

「優しい相談相手のお兄さん」に誘われて…

毎日のようにゲームをするうちに、「優しい相談相手のお兄さん」に、ゲームの話だけでなく学校や家での悩みを打ち明けるようになった。

ある日、そんなお兄さんから「2人で一緒にゲームをやろうよ」とメッセージがきた。

「アオイちゃんはどこに住んでるの? 車があるから近くまで迎えに行くよ。相談にも乗るし」とお兄さんは言う。

一緒に話しながらゲームができたら楽しいかもしれない。もっと強くなれるように、ゲームも教えてもらいたい。

それに、大人の素敵なお兄さんの知り合いがいるっていうのも、ちょっと自慢できるかも。同級生の男子は子どもっぽくて話にならないし、仲よしのB子は「中学受験をするから塾に行くことにした」って忙しくて遊べなくなったし……。

ちょっとだけならいいかな。

すぐ帰ればママやパパにも怒られないよね。

アオイは、お兄さんと約束した公園に向かった。ママには「友だちと遊んでくる」と言って……。