※本稿は、佐々木成三『元捜査一課刑事が明かす手口 スマホで子どもが騙される』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
スマホゲームに夢中になったアオイの話
アオイは小学6年生の女の子。
学校が終わって、外で友だちと遊ぶのも楽しいけれど、最近はスマホのオンラインゲームに夢中になっている。
人気のバトルゲームは、対象年齢は15歳だけど、スマホ版の対象年齢は12歳。でも実は、ママが「リビングでやるならいいよ」って言ってくれるから、5年生のときからやっている。
オンラインゲームでチャットをするようになったのは最近だ。ゲームが強くて、いつも助けてくれる「優しい相談相手のお兄さん」。
今年に入ってママが「勉強しなさい」とうるさく言うようになった。来年はもう中学生なんだから、遊んでばかりじゃ置いていかれるよ、だって。
でも私は勉強があまり好きじゃない。
置いていかれるって、誰に? 意味わかんない。気分次第ですぐ怒るから、ママが忙しそうなときやイライラしているときは、近づかないようにしてる。
そんなときは部屋に閉じこもって、勉強しているふりをしてオンラインゲームをやる。
ゲームをしているときは、嫌なことは忘れられるし、本当に楽しいから。
この間、部屋でこっそりゲームをやっていたら、いきなり部屋のドアを開けたパパに見つかって怒られた。
ママがかばってくれるかと思ったら、「そんなことだったらもう、スマホを持たせないわよ!」と怒った。
「自分だって夕飯のときにLINEばっかりやってるくせに。人のこと言えないじゃん!」
言い返してドアを思いっきり閉めた。
あーあ、面倒くさいなあ。
ママとパパに監視されているような気がして、リビングでゲームもやらなくなった。
「優しい相談相手のお兄さん」に誘われて…
毎日のようにゲームをするうちに、「優しい相談相手のお兄さん」に、ゲームの話だけでなく学校や家での悩みを打ち明けるようになった。
ある日、そんなお兄さんから「2人で一緒にゲームをやろうよ」とメッセージがきた。
「アオイちゃんはどこに住んでるの? 車があるから近くまで迎えに行くよ。相談にも乗るし」とお兄さんは言う。
一緒に話しながらゲームができたら楽しいかもしれない。もっと強くなれるように、ゲームも教えてもらいたい。
それに、大人の素敵なお兄さんの知り合いがいるっていうのも、ちょっと自慢できるかも。同級生の男子は子どもっぽくて話にならないし、仲よしのB子は「中学受験をするから塾に行くことにした」って忙しくて遊べなくなったし……。
ちょっとだけならいいかな。
すぐ帰ればママやパパにも怒られないよね。
アオイは、お兄さんと約束した公園に向かった。ママには「友だちと遊んでくる」と言って……。