理系的素養を持つ文系人材をナメるな

しかしながら、文系のなかでもある程度冷静に思考できる人々は

「新型コロナウイルスを指定感染症の2類から5類に落とせば解決するんじゃない?」
「たしかに、欧米ではたくさん死者が出ているけど、1年経ってみて、日本は圧倒的に死者が少ないのだから、そこまでビビらなくてもよいのでは?」
「アジア系の人間はあまり死なない、という指摘もあるよね?」

……といった調子で、率直に意見を発することがある。

これに対して、理系の専門家たちは「明確なエビデンスがない!」「安易な素人考え」などと歯牙にもかけず、理系ではない人間のことを“サイエンスの素人”と見下したり、論破したりしようとするのである。

あのな……ワシら文系は、お前ら理系の主張に欠けている人間の感情、心情をはるかに理解しているし、“現実的な暮らし”という視点から、困っている人々を慮ることができている自負があるわ。それなのに、理系の賢者様は耳を貸そうともしない。

あと、ワシらだってデータくらいは読めるし、論拠となるデータを提示することだってできる。でも、理系の専門家連中は「文系の人間が都合よく引っ張り出してくるデータなどに信憑性はない!」「お前らはデータの読み方を間違えておる!」と、まともに議論しようともしない。そのまわりでは、思考することを放棄した残念文系たちが「ははーっ!」と理系の専門家に土下座しているような様相である。なんなのだ、この地獄絵図は。

数学・物理で“無双”だったアメリカの高校時代

私自身は、案外理系の素養があると認識している。なにしろ「日本ではあまり死んでいない」「日本は病床数が多いにもかかわらず、コロナを受け入れない病院が多過ぎる。そうした状況から目を逸らせるようにして『医療崩壊』なるパワーワードでけむに巻き、さらにメディアが煽る」というデータ(事実、実状)に基づいて考えているのだから。

テレビ朝日の社員で、『羽鳥慎一モーニングショー』のレギュラーコメンテーターである玉川徹氏は京都大学の理系出身である。それゆえ、同氏の「PCR検査を増やせ!」「ゼロコロナを目指せ!」といった意見は、説得力があるように響いてしまう。でも、私のような文系の人間からすれば「多くの人々は、あなたのように安定した高給をもらっていない。安易にそんな主張を押し付けて、経済を停滞させるな」と、どうにも腑に落ちないのである。

アメリカの高校で数学・物理の“無双”学生だった中川氏。当時獲得したトロフィーには「TOP MATHLETE」の文字が(著者提供)
アメリカの高校で数学・物理の“無双”学生だった中川氏。当時獲得したトロフィーには「TOP MATHLETE」の文字が(著者提供)

私がなにを言ったところで、「あなたは数字がわからない」「すべての検討、判断はデータに基づいておこなわれているのだから、お前は黙れ」「欧米ではー!」などと返されるのがオチなのだろう。ただ、私は「なんで自分は文系に進んでしまったのだろう……」とわれながら不思議に思うくらい、もともとは数学・物理が得意な生徒だった。

古い話で申し訳ないが、かつて私は、アメリカ・イリノイ州のブルーミントンという街の高校生のなかでいちばん数学ができる人間だった。親の海外赴任にともない、中学の途中から高校卒業までアメリカで過ごしていたころの話だ。ハイスクールでおこなわれた数学コンテストで、私は1位を獲得した経験がある。写真のトロフィーにも記載されているように「TOP MATHLETE(MathematicsとAthleteを合わせた造語)」の称号を与えられたのだ。昔取った杵柄きねづかで恐縮ながら、当時の私はハイスクールレベルの数学・物理の分野において、学内で無双状態だった。