ファストリの底力“不買運動の中で勝ち組に”

現在、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの業績が回復基調にある。これまで同社は、カジュアル着を中心に製品開発を進めデザイン性の向上などに取り組んできた。また、同社は事業運営のデジタル化も進めた。そうした戦略が、コロナショックによってはっきり優位性を示し始めている。多くの衣料品メーカーが苦戦する中、同社は業界内での“勝ち組”としての地位を明確にしつつある。

2019年8月6日、ガラガラの「ユニクロ」店舗を見つめる女性。2019年8月2日、日本の内閣が韓国を「ホワイトリスト」から外すことを承認したことで、多くの韓国人が日本製品をボイコットしている。
写真=EPA/時事通信フォト
2019年8月6日、ガラガラの「ユニクロ」店舗を見つめる女性。2019年8月2日、日本の内閣が韓国を「ホワイトリスト」から外すことを承認したことで、多くの韓国人が日本製品をボイコットしている。

ファーストリテイリングの事業戦略によって、反日感情が高まり不買運動まで発展した韓国市場でも顧客に回帰が進んでおり、同社の業績回復に寄与する格好になっている。それに加えて、世界経済の中で景気回復が鮮明な中国でも、ユニクロは人気を獲得している。中国事業の成長などによって、2021年8月期、ファーストリテイリングは純利益が1650億円に達するとの業績予想を公表した。

コロナショックを境に、「ZARA」ブランドを持つスペインのインディテックスなどライバル企業もオンライン事業の強化に取り組み、中国などでの需要獲得を目指している。ただし、株価の推移をもとに考えると、ファーストリテイリングへの成長期待は相対的に高い。それは、同社がデジタル化への取り組みを進めて中国やインドなど成長期待の市場で需要を獲得し、世界トップのアパレル企業に成長するとの見方が増えていることの裏返しだ。

「異常な反日」続く韓国でユニクロが復活したワケ

コロナショックによって、2020年8月期のファーストリテイリングの決算は減収減益だった。しかし、同社は世界経済の環境変化への対応を迅速に進め、収益性は改善し始めている。それを確認する良い例が同社の韓国事業だ。オンライン事業の強化などによって、ユニクロの韓国事業が、厳しいながらも徐々に上向いていることは見逃せない。

ファーストリテイリングは、韓国事業が引き続き厳しいとの見方を示している。背景には反日感情がある。2019年7月、わが国は安全保障面への懸念を理由に韓国向けフッ化水素など特定品目の輸出管理手続きを厳格化した。その結果、韓国の反日感情はエスカレートし、ユニクロやGUブランドをはじめ、わが国企業への不買運動が勢いづいた。

不買運動への対応としてファーストリテイリングは店舗削減を進め、韓国の店舗数は2019年8月期の188から2020年8月期には163まで減少した。その上で、同社はオンライン販売を強化した。2021年8月期の業績見通しに関して、同社は韓国事業が通期で減収になると想定しつつも、粗利益率が大幅に改善するとの見方を示している。