それでもユニクロの衣料品を買いたい韓国人

粗利率の改善は、非常に重要なポイントだ。もし、韓国の消費者心理全体に不買運動を支持する考えが浸透しているなら、利益率の改善は見込みづらい。そう考えると、韓国におけるユニクロへの不買運動には変化の兆しが出ていると考えられる。

つまり、不買心理を求める周囲に気を遣いつつも、オンラインで(他人に見られないように)ユニクロの衣料品を手に入れたい消費者は多いと考えられる。

ある意味、韓国におけるわが国企業への不買運動は、ファーストリテイリングがコロナショック以前からデジタル・トランスフォーメーション(DX)への対応を進め、より効率的な事業運営を目指す重要な機会になった。

オンラインショッピングのイメージ
写真=iStock.com/William_Potter
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同社が一見すると収益獲得のリスクと考えられる事象を、より効率的な事業運営と成長実現のチャンスに変えていることは重要だ。その反面、韓国は雇用機会を失っている。

コロナ禍で世界中の人の生活を支えた「モノづくり」

さらに、ファーストリテイリングの中国事業は回復している。2021年8月期通期に関して、同社は中国事業が大幅な増収増益を達成するとの見通しを示している。

近年、中国市場ではファーストリテイリングに加え、インディテックス、スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)、現地の新興アパレルメーカーが参入し、競争が激化した。競争が熾烈しれつ化する環境下、同社の収益が増大するとの見通しが示されたことは、世界最大の消費市場である中国市場において、ファーストリテイリングの競争優位性が一段と高まっていることの裏返しだ。

中国市場におけるファーストリテイリングの成長を支えている要因の1つは、同社が丁寧かつ、時流に即したモノづくりを重視し、普段着としての衣類の機能向上を目指したことだ。それがコロナ禍における中国をはじめ、世界の人々の生活を支えている。

コロナショックの発生によって、世界全体で人々の外出機会は減った。その結果、ビジネススーツなどの需要は大きく低下した。反対に、より多くの人が快適な普段着を求め始めた。部屋着としてもビジネスシーンにおいても違和感がなく、デザインも、着心地もよい衣類への必要性が世界全体で高まっている。