「スズキ・メソード」と「ほぼ日」には、科学との共通点がある

スズキ・メソードとほぼ日には、共通の特徴があります。それは、創業者がカリスマ的な存在感をもった組織だということです。個人には寿命があるけれど、法人には寿命が想定されていません。受け継いだ人たちが、バトンをつなぐように、少しずつ組織に残った問題を片付けたり、新しいものを継ぎ足したりして、次の世代に引き継いでいく必要があります。

これは科学と同じです。科学というのは、人類が取り組んでいる巨大なプロジェクトだと言えます。僕がCERNでプロジェクトリーダーとして進めていた研究にも、当然のように先行世代がいて、しかもその研究は僕の代では終わることなく、ある程度のところで成果発表をしたら、次の世代に託していかなければなりません。僕がひとりで無限にやれるわけではないのです。

バトンリレーでバトンを渡す手
写真=iStock.com/Clerkenwell
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プロジェクトを率いる流儀は「楽しそうにやること」

科学者としてプロジェクトを率いるには、人によっていろいろな流儀がありますが、僕の場合は「楽しそうにやる」ということを心がけていました。これも学生時代に、指導教授の背中を見て学んだことです。周囲と「楽しそうに」やりながら、自分たちがやりたいことを専門外の人でも分かるように、プロの視点を保ちつつ説明する。そして、次の世代を育てる――僕がスイスや福島でおこなってきたマネジメントは、法人の運営に携わるようになった現在でもなんら変わることはありません。

スズキ・メソードにもほぼ日にも、科学者は僕しかいないので、科学者として気になったことはどんどん発言しています。僕が科学者としてその場にいて、僕の視点を語ることが、法人に新しい視点を与え、組織をより強くしていくことにつながる。そういう発想で、科学と経営をかけ合わせたさまざまな新しいプロジェクトを立ち上げています。