副業が個人に与える6つのメリット

では、副業をすることで、働く人にはどのような効果やメリットがあるのでしょうか。

もちろん、その人自身の資質や経験、また職種や業種によって違いはありますが、私自身の経験や多数の副業経験者の話から考えてみると、大まかに以下の6つが挙げられると考えています。

①普段の仕事では得られないスキルや経験値が上がる
②業界や領域を越えた視点が身に付く
③主体的、自律的に働くようになる
④人脈やサード・プレイスの確保
⑤社外で得た知識や経験を会社に還元できる
⑥収入アップとリスク分散による安心感

では、これら6点のメリットについて詳しく見ていきましょう。

①普段の仕事では得られないスキルや経験値が上がる

まずは、一つの会社にいるだけでは味わえない経験値やスキルが身に付くということです。

会社や業界によって仕事の進め方はまったく違いますから、副業をしていると「こんなやり方があったのか」と驚くこともあります。

良い意味で「会社での常識」が崩れるのです。

ましてや副業では、ホームではなくいわばアウェイの場で仕事をするわけですから、慣れた業務やスタッフばかりではありません。いつも通りのやり方がまかり通らない分、思考する機会が増え、経験値や考える力、スキルが上がっていくのは当然です。

また、通常の会社であれば通りにくいビジネスにも、副業ではチャレンジすることができます。

たとえば、「ハリネズミにドールハウスを組み合わせてみたらどうか」なんて企画は、業績目標や株主の存在を考えたら、勤め先の会社では積極的に進められない新規事業でしょう。

本当にハリネズミで採算がとれるのか、ハリネズミのカフェより猫のカフェの方が無難ではないのか……などと反対されて、結局その企画は潰れてしまう可能性が大きいでしょう。

しかし副業であれば、こうしたニッチなスモールビジネスが成立することもあります。むしろ副業だからこそ、面白いチャレンジができると思うのです。

そして、副業を許可することによって会社側としては「いろいろな仕事を経験してみたい」という社員のニーズに応えることができますから、結果的にやる気のある人材を手放さなくて済むというメリットもあるでしょう。

人材業界にいるからこそ、ホストクラブの組織構造を立て直せられたワケ

②業界や領域を越えた視点が身に付く
歌舞伎町
写真=iStock.com/MasterLu
※写真はイメージです

2つ目は、社員に、本業だけでは得られない複合的な視点が身に付くということです。

たとえば、エンファクトリーのメンバーに、オウンドメディアの編集職に就いている志賀亮太さんという方がいます。志賀さんは、副業でも他社のメディアの編集を複数されています。仕事内容は本業と近いのですが、スポーツスクールや社会人大学院、英語学習メディアなど、業界が多岐にわたっているそうです。

すると、それぞれの業界で、SEO(Search Engine Optimization/検索エンジン最適化)やCVR(Conversion Rate/ウェブサイトのアクセスのうち登録や購入などにつながった割合)の視点が養われることになり、それが本業でも役に立っているといいます。

一人が複数の業界に関わることで、多くの学びがあるということです。

こんな例もあります。

人材業界で働く知人が副業でホストクラブのコンサルティングを頼まれたのですが、いろいろ話を聞いてみると、そのホストクラブでは売れっ子ホストが頻繁に引き抜かれて困っていました。またクラブの店長の役割も不明瞭で、給料も安く、モチベーションも高くありません。

そこで彼は、人材業界でいろいろな組織を知っていたところから、外資系保険会社のような組織構造をこのホストクラブに応用してみたらどうかと考えました。

一部の外資系保険の会社では、一人ひとりのエージェントがあげてきた営業実績の一部がマネージャーにも入る仕組みになっています。その構造を取り入れて、部下のホストが売上を上げたら、その一部が店長にも入るような仕組みを提案したのです。

すると、これまでモチベーションの低かった店長が積極的にホストたちのフォローアップをするようになり、チームワークが良くなりました。

店長の収入がアップすると、ホストたちも店長の職を目指すようになり、職場から離脱することも減りました。

ある業界で成功している組織構造のフレームワークを別の業界に当てはめてみたら、組織がうまく回るようになったのです。

また、「いつかは自分で経営をしてみたい」と思っているなら、それを副業で実現することもできます。会社に在籍しながら、経営者目線を育てることができるということです。