外に出てはじめて社内のリソースに気付ける

③主体的、自律的に働くようになる

3つ目の効果は、主体性や自律性を得られることです。

会社から仕事を与えられるのではなく、自ら手を挙げて行う副業では、当然主体的にならざるを得ません。

また、限られた時間で仕事を進めるためには、効率的に動く必要があります。常に「いつ、どの順番で何を行うべきか」と思考する癖がつきますから、自然とクリエイティビティも上がっていくのです。

私の知りあいにも、副業によって、集中的に仕事をする方法や時間管理のコツを学んだ、と話す方はたくさんいます。

また、私が会社という組織を離れて個人で仕事をしたときに気が付いたのは、「会社がいかにリソースを持っているか」ということでした。

会社の持つヒトやモノ、カネといった資源や企業価値があるからこそ、社員は自分たちの業務を遂行できるのです。

個人が自分の名前だけで稼ぐというのは、実は大変なことです。

やってみて初めて、会社の持つビジネスモデルがいかに優れたものかということもよくわかりますから、その分、会社にはきちんと貢献しなければいけないという意識も生まれます。

そうした会社のありがたみを、副業で実感したという方は少なくありません。

「仕事の越境」を体験すると、自己肯定感が上げる

たとえば、岡田由美さん(仮名)は、本業では大手WEB企業でコーディングの仕事をしていますが、副業では、WEBのコーディングだけでなく、デザインやディレクションなどもトータルに行っているそうです。

部分的な仕事が多い本業と違って、副業では一人何役も行うなど包括的に仕事をしているため、本業では得られない満足感を得ることも多いといいます。

しかし、さまざまな企業と副業をした上であらためて本業の会社を見てみると、大企業であるため安定しており、リソースも十分にあることがよくわかったそうです。

そのため転職や起業はせず、副業でいろいろな仕事を経験して自分のスキルを広げていきたいと話していました。

ときに、会社と社員は「組織vs個人」といった対立構図で語られることがありますが、そもそも会社という船が沈んでしまえば、その船に乗っている社員も全員沈んでしまうわけです。

これまでは、社員は会社の指令に従っていればいいという受動的な考え方が一般的でしたが、経済的に厳しい時代には、会社と社員が協力して荒波を乗り越えていく必要があります。

会社が社員に副業の機会を与えることで、社員は会社の恩恵にあずかるだけでなく、自分自身でもスキルを身に付けて会社にも環流させることができるのです。つまり、「仕事の越境」を体験することで、自己肯定感が上がり、ひいてはそれが本業の成果を上げることにつながるという、本業と副業のシナジーはすでにさまざまな業種で報告されています。

これからは、お互いの利益を考える「相利共生」の意識を持ったフラットな組織が強くなっていくのではないでしょうか。