MVNOに経営破綻や撤退が出る可能性も

1月29日に楽天モバイルが発表した新プランは、データ量が1GB未満の場合ゼロ円で、1~3GBは980円、3~20GBは1980円、20GB以上は2980円という段階制になった。それでも赤字覚悟ではないか、とされるが、利用者を取られないための苦肉の策とも言える。

さらに影響が懸念されるのが、格安スマホ会社だ。MVNOと呼ばれる業態で、大手携帯会社から電波枠を借りてサービスを提供している。昼食時や夕方など利用が立て込む時間帯になると通信が遅くなるなど品質は劣るが、価格が安いことで競争してきた。

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写真=iStock.com/Chunumunu
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それが料金差が一気に縮まることで、品質が圧倒的によい大手3社が有利になるとみられている。すでにMVNOの日本通信のように、月20GBで1980円の新料金プランを発表するなど、値下げする動きが出始めている。MVNOは経営体力が弱いところも多く、薄利多売の競争を強いられれば、経営破綻や撤退などが広がる可能性も出てくる。

携帯大手の寡占体制に戻れば、消費者が損をする

もともと総務省の政策は、MVNOに参入を促し、競争を活発化することで、料金を下げていくことにあった。ところが、菅首相が成果を急ぐあまり、大手に強引な値引きをさせたことで、しわ寄せが弱い企業に行く結果になっている。携帯大手の寡占体制に戻ってしまえば、価格競争が起きにくくなり、長期的には消費者にしわ寄せが行くことになる。

NTTはNTTドコモを株式公開買い付け(TOB)によって完全子会社化し、グループ再編を進めている。GAFAと呼ばれる米国の巨大IT企業に対抗するのが狙いと説明しているが、「分割民営化の流れに大きく逆行する」(経済産業省OB)という声もある。

在日米国商工会議所は「市場の自由競争を阻害する」と指摘、「再編問題は両国関係とイノベーションを阻害する問題だと(米政府に)提起をした」と報じられている。NTTドコモが巨大NTTになることで、圧倒的な資本力を持ち、携帯電話市場で有利になるとの見方もある。

総務省OBの中には国がコントロールする巨大電電公社の復活を夢見る向きもある。NTT再編にいち早く賛成する意見を述べる武田総務相をみていると、総務省に圧倒的な影響力を持つ菅首相の頭の中には、総務省の権益拡大しかないのかもしれない。弱小MVNOはその生贄ということだろうか。

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