日本人に長期投資が根付かなかった根本原因

日本銀行の統計によると、米国民の金融資産の約4割が株式で運用されているのに対して、日本国民のそれは、10%程度と推定されています。これをもって、よく「米国の国民はフィナンシャルリテラシーが高いので株式投資の比率が高いのだ」という人がいますが、これは単なる偶然で、米国民はラッキーだったのだと思います。

米国は企業価値を増大できるような企業が、生き残りをかけてしのぎを削るような市場なので、米国株式およびそのインデックスに機械的に投資しているだけで、結果的に「長期投資の成功体験」を積むことができたのでしょう。

それに対して、残念ながら日本の場合は、株式市場のダイナミズム(新陳代謝)が欠如しており、競争力を失っても市場から退出せず居残るため、そういった企業の総体としてのインデックスも趨勢的に上昇できなかったと考えています。その結果、日本の株式市場は常に中短期的な需給に大きな影響を受けて上がったり下がったりするレンジ内取引に終始することになってしまいました。

このような市場では、「上がったら売って、下がったら買う」というトレーディングこそが株式投資だというスタイルだけが生き残り、長期投資が根付かなったのもうなずけます。

車の屋根にくくられたピンクの豚の貯金箱
写真=iStock.com/CatLane
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「今からでも遅くない」

そのような「賭場」のような市場では、長期投資の成功体験を積むことなど有り得ず、どれだけ政府が旗を振っても株式市場に個人のお金が流入せず、今でも半分以上が何も生まない銀行預金にとどまっているのです。

右肩上がりに上がらない株式市場に日本国民の大事な預金が流れ込まなかったことはもしかしたら「不幸中の幸い」だったのかもしれません。ただ、このような未成熟な株式市場と「眠ったままの金融資産(預金)」という構造が、90年代後半以降の数十年間における日本のGDP成長の低迷の原因の一つとなったことは間違いありません。

この間、米国のGDPと差がつくばかりか、中国にも抜かれ、一人当たりGDPではついに25位に落ちてしまいました。仮に個人金融資産1900兆円のうち銀行預金に眠っている1000兆円の半分500兆円を1%程度で運用できるなら、まさにGDPを1%押し上げることができるのです。

この30年間、米国株インデックスが年率7%以上のリターンを上げてきたことを考えれば、決して無理なことを言っているわけではありません。株式投資には国境などないのだから、日本株インデックスにこだわることなく、米国株インデックスに投資することで、世界の成長を楽しむこともできたはずです。後の祭りともいえますが、今からでも遅くないと思います。